はじめに

苛立つトランプ大統領

「FRBはしばしば間違える。私のほうが彼らよりずっとうまくやれる」。6月のFOMCにおいて、FRBが景気の先行きに慎重な見通しを示したことで株価が急落しました。これは、その直後のトランプ大統領のツイートです。

6月時点に比べると、新型コロナウイルスの疫学的な研究がさらに進み、ワクチンの早期実用化の可能性も高まっていますが、FRBは現在でも引き続きコロナ禍が長期化することがメインシナリオとみているようです。
 
コロナ禍が長期化すれば、雇用の回復が遅れ、デフレリスクが高まってもおかしくありません。FRBはこうした最悪の事態に備えようとしていると考えられ、今のところあまりワクチンに対する期待は聞かれません。不確実なものには頼らないのがFRBの作法なのでしょうか。

「中央銀行には逆らうな」を信じるリスク

市場には「中央銀行には逆らうな」という格言があります。FRBがハト派姿勢を続ける限り、ドル売りは理にかなっていると言わざるを得ません。しかしながら、今回ばかりは闇雲にFRBを信用するのは相応のリスクがあると思います。

専門家の間でも、新型コロナワクチンの効果あるいは副作用については見解が異なるのではないでしょうか。場合によっては期待外れに終わる可能性もありますし、うまくいけば、“ソーシャル・ディスタンス”という言葉が死語になる可能性すらあるでしょう。

FRBのハト派姿勢を反映する形で、現在、投機筋が対ユーロを中心に大量のドル売りポジションを構築しています。一方、前述した米国の実質金利は8月上旬以降、底打ちの兆しがないこともありません。

今後、一段と底打ち感が広がれば、ドルの買い戻しに勢いがつく可能性が高いのではないでしょうか。
 
<文:投資情報部  シニア為替ストラテジスト  石月幸雄>

この記事の感想を教えてください。