はじめに
抗体検査では、「今感染しているか」は分からない
抗体検査は、5月頃行われるようになった血液検査です。抗体とはコロナウイルスに感染した後、免疫反応によりウイルスを排除するためにできる物質で、その多さを調べます。
抗体が陽性になるのは、発症後2週間以降と言われています。つまり「今」感染していることを調べる検査ではなく、「過去」に感染していたかどうかを調べる検査です。
コロナウイルスに感染した人が他人に感染させうるのは、発症前(感染しているけれど症状がまだ出ていない)から発症5日目までと報告されています(JAMA Internal Medicine May 1, 2020, doi:10.1001)。つまり、他人に感染させる時期にはまだ抗体はできていないので、その時期に抗体検査をしても必ず陰性になります。
したがって、抗体検査は「この人を出勤させてよいか?」の判断には使えません。「陰性証明書」を要望する会社があると言われていますが、それは抗体検査ではダメなのです。
抗体検査は感染流行を調べるのに向いている
抗体検査は過去の感染(もう治ったこと)を表す検査なので、ある地域で、住民がどのぐらい感染したかを調べるために行政が行う調査(サーベイランス)としての利用をWHOは推奨しています。個人の診断目的では推奨していません。
一度感染して治癒した後、再感染するリスクがないのかを確認するために、抗体検査を繰り返して受ける方がいるようですが、このような利用法はあるかもしれません。しかし、免疫反応というのは抗体に代表される液性免疫だけではなく細胞性免疫というものもあり、抗体が陽性から陰性になったから再感染するとも一概に言えないのです。