はじめに
欧州でも過去最大の環境投資で経済政策にテコ入れ
バイデン氏の政策に先立ち、欧州連合(EU)でも、経済の復興と脱炭素社会への移行を両立させる「グリーンリカバリー」が掲げられ、化石燃料の代替エネルギー開発に膨大な投資を行う計画が勢いづいています。
「パリ協定」を背景に、EUは2019年12月、2050年までに温室効果ガスの排出を中立(ネットゼロ)にするなどの目標を法制化する「欧州グリーンディール」を公表。中間目標として2030年までに1990年対比55%削減(最低で50%削減)を目指しています。
2020年1月には「持続可能な欧州投資計画」(別名「欧州グリーンディール投資計画」)を発表し、10年間で1兆ユーロ以上の投資計画を示しました。この財源の一部として、EU首脳会議は7月21日、新型コロナで打撃を受けた欧州経済を立て直すための7,500億ユーロ(約92兆円)の「復興基金」の創設で合意。この基金の約3分の1は気候変動対策に充てられます。EU次期7ヵ年中期予算と合わせると、過去最大規模の環境投資を伴う刺激策となります。
高い成長をみせる洋上風力発電
欧州の再生可能エネルギーセクターでは、洋上風力発電の高い成長性が注目されます。2017 年に合併して誕生したシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(ドイツ・スペイン)が洋上風力分野で風力タービンなど機器メーカーとしては世界シェア1 位です。三菱重工業は2014年、デンマークの風力発電メーカーのヴェスタスと折半出資で、洋上風力設備に特化したMHI ヴェスタスを設立しています。
米国でバイデン政権が誕生すれば、見える景色は一転すると予想されます。世界的にグリーンテクノロジーの活用が活発化するフェーズに入っていく可能性が高まっていく見通しです。
<文:シニアストラテジスト 山田 雪乃>