はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

約8年前、一戸建ての住宅をローンで購入しました。しかし、5年前に妻と離婚し、私が1人で住んでいました。一昨年に妻が亡くなり、子供を私が引き取ったのですが、仕事の関係もあり、子供と2人で実家にお世話になることにしました。買った家は空き家で住宅ローンのみ払い続けています。家は売り出してはいるのですが、住宅ローンの残高があるため、市場価格より高めの値段設定となり、なかなか売れません。早く売って楽になりたいのですが、なにかよい方法はございませんでしょうか? 助けてください。お願いします。
(30代後半 寡夫・子供1人 男性)


内藤: 空き家になってローンだけを払い続けている状況は、放置しておくとますます事態が悪化するばかりです。しかもローンの支払いだけではなく、固定資産税や建物の維持コストなど、さらに費用がかかってきますから、急に手を打つ必要があります。

しかし、家の売り出し価格を市場価格より高くしている状況では売却できる可能性は少ないと思います。

ここで、ご質問者の方に必要なのは「ゼロベースで考える」という考え方のシフトです。ローンの残高にこだわるあまり、売却価格を高めにするというのは、ローン残高という自分が作った過去に囚われた行動です。

もし住宅ローンがなかったら

もし住宅ローンがなかったらと考えてみましょう。価格にこだわって売却が遅れるのと、少し安い価格であっても売却してしまうのと、どちらがよいでしょうか? 自問してみてください。

売却してローンの残債だけが残るという事態は確かに避けたい状況です。しかし、売却しないでローンの支払いが続き、固定資産税や維持コストがかかって、最悪の場合、価格がさらに下がってしまうことと比較すれば、どちらがベターかがわかると思います。

ローンの残債が残ってしまったとしても売却することができれば、それ以上、損失が拡大することはなくなります。そこから新しい資産形成の方法を考えていけばよいのです。

過去のしがらみからの脱却を

いずれにしても、まずやるべきことは、適正な市場価格を複数の不動産会社に依頼して算定してもらい、最適な売却価格を自ら決めることです。そして、もし不動産が売却価格で売れた場合の後の資産運用計画を立ててみるとよいでしょう。

売却価格には自分のローンの残高は関係ありませんが、売却後の資金計画には大きく関係します。残債がどの程度残るかによって、次のアクションをどうするのかというリスクの取り方が変わってくるからです。手持ちの資金で残債を相殺できない場合は、家族から一時的に借り入れるといった対応が必要になります。

確かに、購入した不動産が値下がりして、ローン残高より価値が下がってしまうことは精神的には大きなストレスだと思います。しかし、すでに下がってしまった現実を変えることができません。

でも、これからのマネープランは、しっかり計画して実践することで自分の手で変えていくことができます。

過去のしがらみから早く脱却し、自らこれからの未来を切り開けるような状態にもっていく、勇気をもって迅速に行動することをおすすめします。

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