はじめに

各キャリアは基地局整備を加速

総務省の要望に応えるような形で、各キャリアとも基地局整備を当初計画より前倒しにする方針を示しています。

19年4月に公表された「第5世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設計画の認定」を見ると、2024年度末までの各社計画に基づく5G基盤展開率は、NTTドコモが97.0%、KDDIが93.2%、ソフトバンクは64.0%、楽天モバイルは56.1%とされていました。直近ではNTTドコモは1年前倒しを計画、KDDIは2021年度末に全国5万局を整備、ソフトバンクも同年度末には5万局の基地局を整備し、人口カバー率90%超を目指すとしています。

NTTドコモと比べKDDI、ソフトバンクの整備計画が速い理由は、2社が4G向けの周波数帯を5Gと共存させる「ダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)」の活用を進める計画だからです。

DSSは遠くに飛びやすい4Gの電波と、既存の基地局やロケーションを活用できることから、5Gのエリアを素早く広げられます。しかし、電波は4G向けのものを用いるため、通信速度は4Gと大きく変わらず、高速大容量通信は実現できません。

一方で、NTTドコモはDSSの活用に消極的で、あくまで高速大容量のメリットが生かせる5G用の周波数帯を活用し、基地局整備を進めていく方針のようです。面か質か、ここに5G商戦の勝ち負けが絡みそうです。

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楽天モバイルは3社の牙城を崩せるか

そして、気になるのは楽天モバイルの動向です。楽天モバイルは当初、今年6月での5Gサービス開始を目指していましたが、海外のサプライチェーンで行う予定だったソフトウェアの検証が、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン等で困難になったことを理由に、約3カ月をめどに延期する見通しを発表しています。

3カ月後に当たる9月からの開始が見込まれていますが、まだ正式な開始予定日は発表されていません。

楽天モバイルは自社で回線を持つMNO(移動体通信事業者)としてのサービスを4月8日にスタートさせたばかりです。現在は自社通信網の拡充に取り組んでおり、2021年3月末に人口カバー率70%を目指しています。

そんな状況で、本当に5Gサービスの利用ができるようになるのかと思ってしまいますが、楽天モバイルの基地局には、世代毎に異なるハードウエアに依存する他社と異なり、主にソフトウェアのアップグレードによって5Gへの移行が可能となる新技術が活用されています。

つまり、自社通信網の整備が進めば、5G通信エリアの拡大にも繋がるということです。楽天モバイルも、基地局整備を当初計画より5年も前倒しで完了させたいとしています。

現状は出遅れ感のある楽天モバイルですが、既存3キャリアに対抗するために技術力で攻勢をかけており、今後ますます各社の5G商戦が過熱していきそうです。

<文:いちよし証券 投資情報部 樋尾 俊樹>