はじめに

金融政策と政治が一体化している現代

一方で、2018年以降をみると、日経平均株価データと内閣支持率が似た動きをしているようにも見えます。内閣支持率と株価動向の連動性を支持する市場参加者も確かに存在しており、その根拠としては、近年「金融政策と政治が一体化している」という背景がある点を挙げています。ここ2年の傾向でいえば、たしかに連動する基調となっているようにも思われます。

確かに、統計数理研究所の調査は1976年からの調査であり、アベノミクスのように金融政策が主軸に置かれた期間が短いため、支持率と株価の関係が過小評価されている可能性も無いとは言い切れません。

「緩和的な金融政策を継続する」と主張する政権が、長期・安定的に営まれているとすれば、市場は将来の金融政策を織り込みやすくなるといえ、緩和政策に有利なポジションを取りやすくなるといえるでしょう。そして、仮にその内閣の支持率が急落すれば、次の政権で緩和的な金融政策に見直しが入るリスクもないとはいえず、安心感を持ったポジションを取ることが難しくなってしまいます。

これは「長期政権と経済成長率」の関係からも同様のことがいえます。一般的に、長期政権時は経済成長率が高い傾向があるといわれていますが、日本においては、佐藤栄作氏(2798日)に対して経済成長率が年率約10%、吉田茂氏(2616日)の9%、池田勇人氏(1575日)の12%と、高い年平均成長率を誇る例が多くみられます。

高い年平均成長率は株価にとってもプラスになる要因といえます。また、長期政権を維持するためには高い内閣支持率が伴うことが不可欠です。そうすると、内閣支持率と株価には、金融政策の重要性が高まっている昨今においては、間接的な影響力を高めているとも考えることができ、無視できない要素であるとも考えられます。

もっとも、内閣支持率の動向から短期的な株価の変動を予測するのはナンセンスです。例えば、この度のコロナ禍では、3月のコロナショックで大幅に下落してから大きく戻している一方で、内閣支持率は低調で推移していました。安倍首相の辞意表明までは後手気味な対応を批判する国民の声も根強く、支持率は30%代で推移していました。

タイミングごとに支持率と株価の動向をみると、全く別の因果関係で発生した要因が、時期が重なったことで因果関係があると錯覚してしまうこともあります。内閣支持率と株価の関係は、中長期の投資判断において参考程度にとどめておくべきであるといえるでしょう。

<Finatext グループ 1級FP技能士 古田拓也>

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