はじめに
加齢や健康上の問題があっても、制限なく日常生活を送ることができる社会の構築も重要
「日常生活に制限」をもたらす懸念のある要因を取り除き、平均寿命を上回る健康寿命の延伸を実現するための各種政策は、個人のQOL(生活の質)向上のためにも、高齢化がますます進む日本における成長戦略としても重要なことだと思われます。
一方で、目標どおり2040年までに健康寿命が+3年延伸されたとしても、国立社会保障・人口問題研究所の推計(平成29年中位推計)では、この間に平均寿命は男性2.41年、女性2.49年延伸すると予測していることから、これらがすべて実現したとして、「日常生活に制限がある期間」の改善は2040年までに0.5年程度にとどまります。
すなわち、どれだけ健康寿命が延びても、加齢や病気、体調不良は避けようがなく、日常生活に影響がある期間は一定期間生じると考えられ、その期間は一生を通じて男性で9年弱、女性で12年弱となっています。今、政策で掲げられているような健康悪化の早期発見や予防、効果的な治療を行う仕組みづくりによって健康で生きられる期間が伸びることは理想的でしょう。
しかし、健康増進政策が進むほど、加齢や病気に対して、不安や嫌悪感が増している懸念があるのではないか、と筆者は考えています。加齢や健康上の問題があっても、制限なく日常生活を送ることができる社会を構築することで、加齢や病気に対する過度な不安を取り除くことも大切なのではないでしょうか。