はじめに
キュートで楽しい車であるからこそ
そんなホンダeとのドライブ、実に快適です。ホンダとしては珍しい後輪駆動(FR)です。これによって前輪の切れ角が大きく確保できたため、その回転半径は軽自動車並みの4.5メートル。全長も短いため、本当に小回りがききます。実は試乗会場に道幅3.5メートルの路地裏を模したような特設の迷路コースがありました。
道幅3.5メートルの迷路を段ボールを積み上げて作り、そこを切り返し無しで走行出来る
そこで一度も切り返すことなく迷路を一筆書きで走れると言うのです。実際にチャレンジしたのですが、残念ながら一度だけ切り返しを行いました。もちろんそれはクルマのせいではなく、私自身の油断からです。
その後は市街地や高速道路を走りましたが、FRスポーツカーのような楽しさを十分に感じながらドライブ出来たのです。この点においても前輪駆動(FF)車が圧倒的に多くなった現在、後輪駆動でパワーを伝え、前輪でコーナーを切っていくというスポーツ走行ならではの気持ちよさを思い出すことが出来たことも大きな収穫です。
ちなみにモーターの最高出力は154馬力、最大トルクは315Nmで、その加速感はけっこう強烈です。スタイルだけでなく走りでも“楽しさ”を思い出させてくれる存在だったのです。
充電量や航続可能距離などの表示も視認性がいい
最後には「このキュートで、スポーティなハッチバックと共にずっと走っていたい」という気分になったのです。しかし、ここからが問題です。このホンダeの搭載されるバッテリーは35.5kWh。アドバンスの場合ですが、その航続距離はWLTCモードで259kmとなっています。初代の日産リーフが20kWhでJC08モードの航続距離は200kmでしたが、実装テストをすると100km少々というところで充電するのが安全圏でした。
ホンダeはそれ以上に厳しいモードで259kmですから、それよりは確実に走りますが、実走では200km少々という感じかもしれません。しっかりとテストしたわけではないのでなんとも言えないのですが、リーフの40kWhよりはやはり20~30kmぐらいは短いと思います。メーカーのいうところの「シティユースとして、多くのユーザーの使い方を見れば、これでその役割は果たせます」という理由も、もちろん分かります。
確かにバッテリー容量を増やせば航続距離も伸びますが、一方で車重も増して消費電力も増え、その損益分岐点が実に難しい設定となります。
なんとも悩ましい問題をEVは抱えていることは理解した上で、現在はまだ日産のディーラー頼りのようになっている急速充電インフラが気がかりです。あの道の駅やSAなどでの、殺伐とした充電待ちの状況を考えると、なるべく充電回数は減らしたいとも考えてしまうのです。
そして標準タイプが451万円、アドバンスが495万円という価格で、補助金はあるとは言え、これをセカンドカーとして考えるのはやっぱり辛いというのも本音です。何よりも、この素晴らしくキュートで楽しいクルマと一緒に、思い立ったら気軽に大きな心配もなくロングドライブを出掛けて存分に楽しみたいのです。クルマが魅力的であればあるほど、その気持ちが強くなってしまいました。