はじめに
中国国内で進む消費の二極化
1~9月期、中国の1人当たり可処分所得は実質で前年比+0.6%と小幅に増加しましたが、居住地別に見ると都市部では同▲0.3%と都市部の弱さが浮き彫りになりました。この背景には、農民工と呼ばれる農村部からの出稼ぎ労働者の多くが職を失っていることがあると筆者は考えています。
当局の発表によれば1~9月において、中国では900万人弱の新規就業が確認されたとしています。新型コロナウイルスが制御された後に雇用は回復しましたが、その裏で農民工の雇用回復は鈍く、昨年よりも380万人以上減少しています。
そうした雇用減少は農民工など低所得者層に集中しており、こうした層の雇用・所得の戻りの鈍さが消費全体の足を引っ張っていると思われます。
新型コロナ収束後、インバウンド需要の戻りが期待できるかもしれない
これまで述べてきたように、中国におけるコロナ禍の悪影響はその多くが低所得者層に集中している可能性があります。
その一方で、中間層以上、特に富裕層の消費意欲がそれほど落ち込んでいないということは、他国での新型コロナウイルスの感染が落ち着いて海外旅行が可能になれば、再び中国勢による爆買いといったインバウンド消費が戻ってくる可能性があると筆者は考えています。
既に、日中間のビジネスに限った往来の再開に向けた動きも出てきています。事態は新型コロナウイルスの感染状況次第であり、流動的な側面が強いものの、2021年にかけて国境を跨いだ移動が可能になれば、中国勢によるインバウンド消費の恩恵を日本が再び受ける可能性は高いでしょう。
<文:エコノミスト 須賀田進成>