はじめに

10月以降の世界の株式市場では、方向感のない相場展開が続いたあと、月末にかけては軟調に推移しました。足元の景気は堅調に推移する一方で、米国での大統領選を巡る不透明感や、欧米での新型コロナの感染再拡大などが、市場参加者の警戒感を強めたと考えられます。

株式市場がいよいよ2020年の終盤に差し掛かるにあたり、相場の転換点となりうるのは、やはり11月3日の米大統領選でしょう。市場では「どちらが勝った場合に株価はどう動くか」といったシミュレーションが盛んですが、4年前の教訓から、場合によっては市場の反応が予期せぬものとなり得る、と身構える投資家も少なくありません。

現時点で言えることは、大統領選通過に伴う不透明感の払拭は、結果はどうであれ、市場ではポジティブに捉えられやすいということです。選挙の泥沼化だけは避けたいと考える市場参加者は多いと推察されますが、それがない限りは、新政権への期待などを背景に相場は好転に向かうことが予想されます。


どちらが当選しても好感?

11月の米大統領選では、いずれの候補が勝利しようとも、株式市場は好意的に受け止めると想定されます。トランプ氏の再選なら、これまで通りの経済優先の政策が期待できますし、バイデン氏の当選であっても就任当初は共和党案を上回るほどの大規模な経済対策が望めそうなためです。

選挙結果が判明するまでの時間が長期化することが最大のリスクですが、決着が早ければ早いほど、相場は良好なリスタートを切ることになりそうです。そして、就任後の約3ヵ月間は、いわゆる「ハネムーン期間」と位置付けられ、政策の巧拙は問われにくく、株価は底堅く推移すると見られます。

大統領選を通過した後は、徐々に企業業績などのファンダメンタルズに市場参加者の目線がシフトしていくと考えられますが、現時点での見通しは決して悪くありません。10月30日時点の市場予想(リフィニティブ調べ)では、S&P500 採用企業の業績は2020年が前年比約18%の減益予想に対し、2021年は同25%の増益が見込まれています。

カギは景気敏感種?

これが現実のものとなるか否かは、これまでの牽引役であった主力ハイテク企業に加えて不調業種(資本財、一般消費財、素材など)の挽回が必要不可欠です。大統領選の結果を問わず、米国では、今後追加の景気対策が導入されると見込まれます。それが景気敏感業種の業績回復にも寄与すると考えられます。

米国では今後さらなる金利の低下は見込みづらく、結果としてPERの上昇余地も限られてきているように思います。それでも引き続き、米国株に高い関心が寄せられるのは、金融相場から業績相場への移行に対する高い期待の表れでしょう。米国株への集中的な資金流入は今後もまだ続きそうです。

欧州市場が不安定化するワケ

他方で、最近の欧州市場では、予想PERの低下が顕著となっています。6月の段階で17倍を超えていた独DAXや英FTSE 100の予想PERは直近で13倍台まで低下しています。そこまでバリュエーションが切り下がっても、一概に割安とは言い切れないのは、欧州にはそれなりの理由が存在するからだと考えられます。

一つは、欧州で広がる新型コロナの感染再拡大である。欧州の主要国では、1日あたりの感染者数が過去最高のペースで増加し、一部の国では夜間の行動が制限される事態に陥っています。それが及ぼす景気への悪影響は否定できず、株価の見通しが不安定化しているのです。

もう一つは、EUとEUを離脱した英国との間で自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉が難航していることです。英首相が期限に設定した10月半ばを過ぎても、交渉はまとまっておらず、協定なしでの移行期間の終了が現実味を帯びてきています。

英国のEU離脱を巡っては、もう一波乱ありそうで、そうした不透明感が投資マネーを遠ざけている面があります。目先の欧州株に対しては、細心の注意を払って臨みたいところです。

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