はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
インターネットなどで調べたのですが、よくわからないので教えていただきたいです。私は契約社員で年収200万円ほどです。旦那の扶養には入っていません。今年の医療費は私が約13万円、旦那が約8万円でした。家族分の医療費が10万円以上かかった場合、それ以上の金額が控除の対象になる……と書いてあったのですが、扶養家族に入っていない場合は、旦那と私の医療費を合算して21万円とすることはできないのでしょうか?
(20代後半 既婚・子供なし 女性)
野瀬: 医療費控除は間違える方が多いポイントです。ご質問への答えは、結論からいうと「できる」です。
条件は「生計をひとつ」にしていること
医療費控除については「扶養」はその条件ではなく、「生計をひとつ」にしているかどうかが条件になります。質問者の方の場合、質問文からはその点はハッキリしていませんが、おそらくこの条件はクリアしていると思います。
逆にいえば、生計をひとつにさえしていれば同居している必要もありません。基本的な生活の面倒をみており、医療費を負担したのであれば医療費控除の対象になります。
たとえば、遠く離れて下宿している大学生の息子や、故郷で暮らしている母親といったケースも該当します。 ここも忘れがちですので、これらの家族からも確定申告前に病院の領収書をかき集めるようにしましょう。
節税効果をより大きくするには
それ以外にも医療費控除の節税効果をより大きくする方法があります。
(1)薬
医療費控除には薬局で購入した薬代も含めることができます。風邪を治療するために風邪薬を買ったのであれば、しっかり領収書を残しておいてください。ただこれは「治療のため」の薬であることが条件です。「予防」を目的とする薬は対象外ですので、ご注意ください。
(2)交通費
医療費には「通院」に必要だった交通費を含めることもできます。タクシーを利用したのであればその領収書を、バスや電車・地下鉄を利用したのであればそのメモを残しておきましょう。家族分も含めると結構大きな金額になるはずです。
(3)誰の確定申告で控除を申請するか
「生計をひとつ」にする家族の医療費をすべて足すことができるのであれば、次は「誰の確定申告で控除を申請するか」が大切になります。かえってくる金額を大きくするには、「一番所得の大きな人」で確定申告するのがよいでしょう。
医療費控除でかえってくる税金
医療費控除でかえってくる税金は原則は以下のようになります。
(医療費等 - 10万円)×税率=かえってくる税金
そしてみなさんご存知のように、日本では「累進課税」という制度があります。これは所得の大きな人にはより高い税率が課せられるという制度です。
この累進課税を踏まえ、「かえってくる税金」を一番大きくするためには、もちろん「家族の中で一番税率が高い人≒一番所得が多い人」の確定申告にて医療費控除を申請したほうがよいということになります。
質問者の方の場合、年収は額面で200万円とうかがっています。おそらく、その場合の税率は最低の5%になります。そして旦那さんのお給料は質問者の方よりもかなり多いと仮定して、その結果、税率はより高い20%であったとしましょう。
医療費は合計21万円でしたので、それぞれの場合でシミュレーションしてみます。
【質問者の確定申告にて医療費控除を行った場合】
(21万円 - 10万円)×5%≒5,500円
【質問者の旦那さんの確定申告にて医療費控除を行った場合】
(21万円 - 10万円)×20%≒2万2,000円
その効果は4倍になることになります。
この(1)~(3)を意識して、より効果的な医療費控除の恩恵を受けるようにしましょう。