はじめに
結局、まるまる損をして
イクエさんは結局、さらに100万円を夫に渡しました。夫からは「けっこう儲かっているみたいだよ」と報告を受けたので安心していたのですが……。
「10月半ばでしたか、帰宅した夫の顔が真っ青で。『彼と連絡がとれなくなった』というんです。その日はひっきりなしに携帯で電話をかけていましたが、やはりつながらなかった。いったいどういう友だちなのかと尋ねたら、『飲み屋で知り合ったトレーダーなんだ』と。会社はと聞くと、自分で会社を興していたけれどそちらも電話がつながらないと。ホームページがあったはずだけど、それも見つからなくなっているって。詐欺にあったんですよ。あわてて警察に被害届を出そうとしましたが、夫は証書のようなものをまったくもらっていない。どうしてそんな簡単に人を信用するのよ、と大げんかになりました」
夫はなぜ彼を信用したのか、本当は夫がお金を必要としてウソをついているのではないか。イクエさんの心の中に数々の疑惑が生じました。ただ、夫の憔悴ぶりを見ると、やはり夫自身も騙されていたとしか思えません。
「その後、夫が彼と知り合ったバーに出かけて消息を知ろうとしたんですが、彼はその店の常連でもなかったし、誰も素性を知らなかった。その店で他に騙された人はいなかったようです。どう考えても私は夫が愚かだったとしか思えない」
それ以来、夫婦の関係は最悪の状態だそうです。イクエさんは現在、お弁当屋さんでのアルバイトを週6日に増やしました。時給のいい朝と深夜を中心に必死に働いています。
「夫は意気消沈していますが、できるなら夫にも副業をしてほしい。私が200万稼ぐには、2000時間近く働かないといけないんですよ。2000時間って、不眠不休で80日以上。それわかってるのって先日も夫に愚痴ってしまいました。彼は『ごめん』と言うだけ。お金の問題だけじゃなくて、そうやって根拠もなく人の話に乗ってしまう夫の性格、騙されたとわかってからの夫の落ち込みようにもイライラさせられています。このまま結婚生活を続けていいんだろうかとさえ思うようになってきました」
金の切れ目が縁の切れ目とまでは言わないけれど、夫への信頼感は一気に地に落ちたようです。そして彼女は「そもそもオレの稼いだお金」と今後は言わせないよう、自分の給料は家計には使わず、全額自分の貯金にするつもりで倹約に勤しんでいます。