はじめに

少し前になりますが、10月に「ディスクロージャー優良企業」が日本証券アナリスト協会より発表されました。10月15日付の日本経済新聞に発表記事が掲載されていたので、目にした方もいるのではないでしょうか。

“ディスクロージャー”は情報開示という意味です。「投資家に対して、経営実態や活動状況の開示が充実している」と企業分析の専門家である証券アナリストが選んだ企業になります。今年の“優良企業”には東証1部企業からは18社が選ばれました。

情報開示が優れた企業に関しては、これまで学術的な研究分野では株価は上がるという報告が見られてきました。そこで今回は、証券アナリストが選んだ「ディスクロージャ―優良企業」が投資の銘柄を選ぶ基準として使えるのか、検証してみました。


多岐にわたる選定基準

「ディスクロージャ―優良企業」の選定基準は証券アナリストが策定し、評価したものです。基準の詳細は協会のウエブサイトで分かりますが、かなり専門的なものです。

近年、企業は環境に配慮して事業を行わなければならないことや、仕事をする上で女性の活躍を支援する必要があると言われています。企業は社会に大きな影響を与える存在なので、社会を良くする責任があるからです。

このような企業の社会的責任を果たす活動が実際どのように行われているかの開示度合いまでも「ディスクロージャー優良企業」の選定では評価基準の1つになっています。

企業側も情報開示の重要性を理解するようになりました。多くの企業は自社ウエブサイトで“ディスクロージャーポリシー”を載せています。皆さんも検索サイトで 興味を持った企業の“名前”と“ディスクロージャーポリシー”と2つの言葉を同時に検索すると良いかもしれません。その企業の情報開示方針を知ることが出来ます。

「ディスクロージャ―優良企業」の株価は上がる?

企業側も重視する情報開示ですから、それが優れた企業の株価は高くなりそうですね。確認してみましょう。過去に「ディスクロージャ―優良企業」に選ばれた企業の株価が、その後、実際に上昇したかを分析します。

過去に選ばれた企業の一覧は日本証券アナリスト協会のウエブサイトで見ることができます。今回は、2003年から2019年までの16年間に東証1部で選ばれた企業を対象に分析を行いました。

毎年10月に発表されるため、11月から翌年10月までの1年間の株式パフォーマンスを観察しています。毎年18個の業種に区分されたなかで、それぞれ1社ずつ選ばれます。合計18社になるので、その18社の1年間の収益率を平均しました。

ただ、株式市場全体の動きと比べて、どの程度上昇するかを見る必要があるため、同じ期間の日経平均株価に対する超過収益率を用いています。この平均超過収益率が2003年から16年間計算できるため、更にこれらを平均します。

ちょっと分析方法がややこしく感じるかもしれません。要するに優良企業に選ばれた後、1年間で平均してどの程度、日経平均株価を上回って上昇するかを見たものです。

1_ディスクロージャー優良企業の株式パフォーマンス

結果を見ると、1年間(1年後まで)で3.9%と日経平均株価を上回るリターンとなりました。事前の想定通り「ディスクロージャ―優良企業」の株価は上がる傾向が分かります。

また、5年後までの平均超過リターンを同様に計算してみましたが、どの期間でも上昇してきました。長期的にも株高傾向です。

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