はじめに

クロスの修繕1つでも解釈は多岐に渡る

(3)ガイドラインで具体的な事例を調べる

例えば、「クロスは減価償却的に6年で価値がなくなるもの」と位置付けられています。あなたが6年以上住んでいる部屋を退去するとき、クロスの張替え費用を請求された場合は、「ガイドラインでは6年でクロスは償却すべきものと規定されており、クロスは経年劣化として、修繕は貸し手負担とすべきと思料します」と主張すればよいのです。

ただし、「通常の使用」「経年劣化」の判断は難しい面もあります。一番気を付けたいのは「タバコ」と「ペット」です。タバコのヤニや、ペットによる汚れや破損は「通常の使用」と規定されていません。ガイドラインによっても、入居者の責任とされることが原則です。

また、いくらクロスが6年で価値0円になるとしても、たとえば壁面にいたずら書きしてしまうと、入居者の責任とされ、修繕費用を請求されます。

他にも、釘やねじによるクロスや壁の破損も、修繕費は入居者の負担になります。一方で、がびょうの穴は「通常の使用」になるので、貸し手側から請求されることはないはずです。がびょうでポスターを貼っても、ガイドラインは「通常の使用」と規定しています。

ちなみに、ポスター跡がクロスに残った場合は、どうなるのでしょうか? また、テレビなどのすぐ裏にあった壁が黒ずんでしまう、いわゆる「電気やけ」の場合はどうなるでしょう? これらは「経年劣化」とガイドラインでは規定されているので、修繕費を請求されたら、異議を唱えたいところ。

ただし、もし入居者が置きっぱなしにしていた段ボールの山の裏の結露などで、カビが発生していたとしましょう。この場合の黒ずみの修繕費は、入居者の負担となります。壁にずっと物を置いておくのは、敷金的には危険といえるでしょう。

このように、クロス1つとっても解釈は多岐に渡ります。見積書をみて、「これはおかしいのではないか?」と感じた場合は「原状回復ガイドライン」と検索して、国土交通省の様々なケースの判断例をチェックしましょう。

注意点としては、ガイドラインで貸し手側の負担と規定されていても、100%敷金が戻ってくるものではない、ということ。たとえば賃貸契約書をよく見ると、クロスの張り替えについて貸し手側に都合のいい「特約」が含まれているケースもあります。ガイドラインは法令のような「絶体的な存在」ではない、ということを覚えておきましょう。

ただし、ガイドラインの内容を口にしただけで、貸し手側が態度を軟化させる場合もあります。知は力。知っているのと知らないのとでは、結果に大きな差を生むかもしれません。また、「黒ずみ」などが入居時点であった場合、それを写真に撮っておくなどの「予防措置」を取ることも可能です。

以上、敷金トラブルが起きたら、この3つの対応法を行うようにしてください。

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