はじめに

街中にむき出しの小便器に住民が反発

導入当初、パリ市内のサンルイ島に、ユリトロトワールが設置されました。サンルイ島はセーヌ川の中洲の高級住宅街で、パリの中心部に位置しています。同所は、夏の夜になるとセーヌ川沿いの歩道を中心に、ピクニック客の立ちション被害に悩まされていたからです。

3夜の街角での使用例 ©️︎ Faltazi

しかし、ユリトロトワールの真っ赤な色使いと、剥き出しの便器という存在感などによってサンルイ島の住民の反対に遭いました。結果、同島を管轄するパリ4区の区長の思いとは裏腹に、すぐに撤去される憂き目に会いました。

さらに、ユリトロトワールは男性のトイレ需要しか解決できないため、男女平等ではないと反発も起きました。

批判を受け女性向け個室型小便器を開発

このユリトロトワール騒動から2年後の2020年、ファルタジは女性側の需要を受け止め、女性用の簡易小便器を開発しました。それが女性用のユリトロトワールです。

女性用は、男性用とは異なり個室になっています。和式と洋式トイレの折衷のような形で、便座に座るのではなく中腰になって腰を浮かしつつ、用を足します。尿はトイレ下部のタンクに溜め込まれ定期的に汲み取られ、汲み取られた尿は畑の肥料として使われます。汲み取った排泄物の輸送には、CO2排出量が少ない自転車などの手段を使います。

同社の資料によれば、集められた尿は畑の肥料として、大麦やホップの栽培に使われ、それら作物がビールになり、ビールが再び排泄され、環境の中で循環していくそうです。

じつは、このユリトロトワール騒動以前にも、パリの街中には個室型の公共トイレ「サニゼット」が2006年から各所に設置されていました。こちらはユリトロトワールと異なり「大小」どちらも対応でき、1回使うごとにトイレ内を水で丸洗いする機能が付いています。

ただし、サニゼットの場合は水を使うため、汚水を増やしてしまいます。また配管工事を行う必要があり、どこでもすぐに設置するというわけにはいきません。ユリトロトワールの場合は、トイレ単体で完結し導入がしやすいという利点があります。