はじめに
少ない元手で大きな資産を築けたらうれしいもの。そんなの夢物語……と思いきや、実際に達成している人がいます。投資家・遠藤洋さんです。ベストセラーの著書『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』では、その方法を公開。2020年12月には続編も刊行されました。遠藤さんに株式投資のノウハウを聞きました。
「分散投資」をオススメしない理由
――遠藤さんといえば、成長する前の企業を探し出し、厳選した銘柄に資金のほとんどを集中する「小型株集中投資」のスタンスで知られています。さまざまな銘柄に少しずつ投資する「分散投資」が基本と言われる中で、なぜ真逆の手法をとるのですか?
確かに分散投資はリスクを抑えた上で、コツコツ資産を増やすには王道の投資手法です。でも、それで喜ぶのは莫大な資産がある人。分散投資はリスクが少ない分、利益もそこまで伸びません。仮に年5%の利益として、1億円を運用するならいいですよね。年500万円の利益ですから。でも、一般の僕らが100万円運用して年に5万円入っても、生活は大きく変わりません。
――確かにお金は増えますが、人生が劇的に変わるわけではないかもしれません。
もちろん、それを望む人はいいんです。ただ、せっかく個人で投資をやるなら資産の桁を増やしたく無いですか? たとえば米Amazonの株を1997年の上場した時に100万円分買っていたとしたら、今頃いくらになっていると思いますか? 答えは20億円以上です。もちろんこれは極端な例かもしれません。 しかし、株式投資にはこれだけの威力があると言うことを知って欲しいのです。 100万円が20億円に化けたら、さすがに人生変わりますよね? このように資産の桁を増やそうと思ったら、分散投資ではなく、将来大きく成長する会社を見つけて、集中投資の一択になります。
――ただ失敗も怖いですよね。1つの銘柄に資金を集中させるからこそ、値下がりした時は……
もちろんです。だからこそ、どの会社の株を買うのか死ぬ気で調べるようになるのです(笑)。もちろん失敗する時もありますが、そこから得られる経験はその後の利益に必ず繋がっていきます。これが分散投資だと要因となる構成要素が多すぎて、失敗しても何が悪かったのか分からないのですよ。また、投資を始めたばかりの頃はいきなり全資産を投資するのではなく、少ない金額からはじめましょう。
――でも、どうやって投資する銘柄を探すんですか?
その会社が世の中にどんな価値提供をしているか見てください。大きな価値を提供できそうな会社は株価が上がります。逆に、名だたる大企業でも価値提供が出来なくなれば株価は下がります。そして、時代の変化によって「価値」の定義も変わっていきます。
――時代でどんどん変わる……ですか。
はい。いい例がテレビや冷蔵庫です。戦後は誰もが欲しがる人気商品でしたよね。当然、これらを作る企業は世の中に大きな価値提供をしていた。でも今はどうでしょう。テレビや冷蔵庫は行き渡り、あって当たり前のものです。昔ほど欲しがる人は多くない。ということは、テレビや冷蔵庫の価値が戦後に比べて、相対的に下がったわけです。そうなると、それを作っている家電メーカーも今の時代に価値提供できなくなり、結果、株価もズルズル下がってしまう……なんてことになります。
未来の有名企業に賭ける
――価値提供と連動して株価が動いているということですね。逆に遠藤さんが持っていた銘柄で、株価が伸びたところはどんなところですか?
RIZAPグループはいい例ですね。今の豊かな日本では、食べるものにそれほど困りません。すると、肥満に悩む人が増えてくる。人は生理的欲求(食事や睡眠)や安全の欲求、社会的欲求が満たされると、次第に承認欲求などが強くなります。これは「マズローの五段階欲求説」と言われるもので、生存に必要な欲求が満たされるほど、カッコ良く思われたいなどの承認欲求が強くなるんですね。
このニーズに合っていたのがRIZAPでした。スポーツジムは多数ありましたが、RIZAPはCMを工夫し「2ヶ月でこの体が手に入る」とお客さんが手に入れるものを明確にした。これが現代の欲求にフィットしたのです。今の時代に生きるみんなが欲しいと思う商品(=価値ある商品)を提供したことで、株価も半年で約6倍になりました。
――時代にマッチした価値提供ができた例ですね。
はい。RIZAPに関しては、その後の経営戦略が僕の考えと合わず株を手放したのですが。他にも「ポケトーク」という音声翻訳機を開発したソースネクストは印象的ですね。格安航空のLCCが出て数年経ち、インバウンド観光客も増えていました。そこでこのツールはヒットするなと。ポケトークの発売リリース当日にソースネクストの株を購入しましたね。
――昔のRIZAPやソースネクストのような急成長する企業はどうやって探すのですか。
まず世の中を見ることです。世の中の変化やトレンドですね。一番大事なのは一次情報ですから、行列ができている店でもいいですし、SNSで盛んにつぶやかれていることでもいいです。
どんな時代にも成長するサービスやジャンルはあります。コロナ禍でも、人々の行動がどう変わったかを押さえれば、投資対象は見えてきます。
外に出なくなったことで、家の中で使うものへのニーズが増えました。居酒屋に行く人は減りましたが、お酒を飲みたい欲求は変わらないので、宅配注文できるサービスも伸びた。こういった「ちょっと先の未来の変化」を予測して、大きな価値提供をする企業を探すのがポイントです。
――「ちょっと先」ですね。ちなみに遠藤さんは、普段どのくらい先をイメージして株を買っていますか?
だいたい1〜3年後の近未来ですね。今の時代、技術も時代も急速に変わります。その中で10年先を予測するのは難しい。想像もつかない変化が起きているかもしれませんから。それなら、1〜3年くらいがちょうどいいと思います。
――3年後ですね。その未来を予測して、大きな価値を提供していそうな会社を探すと。
はい。初心者によくありがちなミスは、有名企業を選んでしまうこと。気持ちはわかります。有名企業のサービスや商品はよく知っていますから。
でも、投資はあくまで未来に対してベットするもの。会社の未来を買うことと同義なんですね。僕ら投資家が投資すべきなのは今の有名企業ではなく、「将来有名になる企業」ですから。
お金だけでなく、時間の使い方も同じです。未来の自分のために使うものが「投資」ですよね。その考えを持って生活すると、株式投資だけでなく自分の仕事やライフスタイルも良くなっていくと思います。
※この記事は投資を推奨するものではありません。投資を行う際は、リスクを理解した上でお願いいたします。