はじめに

空き家として管理する場合

――では、今は空き家にせざるを得ないけれど、数年後に住む。あるいは、売買や賃貸などの活用をする、という場合。何に気をつけて「空き家」にしておくといいか、教えてください

事前の準備として、まずは事前に自治会長さんやご近所にあいさつをして、「問題があったら連絡をください」と連絡先を伝えておくことが大切です。そして、月1回、空き家の管理に行くときに、一声かける。

――やっぱり、月イチの管理が必要ですか

人が住まなくなった家は急速に朽ちていきます。人の出入りがないので換気がされず、湿気がこもってしまう。湿気、結露、カビが家を劣化させる大きな原因です。月1回、定期的に訪れて風を通す。タンスや戸棚も空けて、空気を入れ替えましょう。

そして、通水も忘れずに。長期間水道を使用しないと、排水管の中の水が蒸発してしまう。すると、下水からにおいが立ち上り、これが空き家の嫌なにおいの原因になるんです。管理に訪れた際は、1分くらい水を流しっぱなしにして水を通しましょう。

――水道を止めてしまう場合もありますよね

水道を止めると、水道管が錆びる原因になります。ただ、止めておかないと基本料金がかかるので、難しい判断にはなりますが……。におい対策としては、もし水道を止めてしまっている場合は、排水口に蓋をしておくといいと思います。

あと、室内は掃除をして、部屋の壁や天井をチェックをしていて、雨漏りしていないかを確認。建具の動作も見ておくといいでしょう。

――あと、特に気にしておくべきことはありますか?

注意して見てほしいのが、屋根と外壁です。屋根や外壁は10年〜15年周期でメンテナンスが必要な場所。放っておくと、瓦の下の防水シートの劣化等により雨漏りなどの原因になります。また、最近は大型の台風が来ることが多く、瓦のズレなども見ておきましょう。

――これを月1回……大変です

とくに、遠方に住んでいたりするとなかなか難しいですよね。しかも、今年は新型コロナウイルス流行で移動がままならなくなっている。私共でも空き家管理サービスを行っていて、今年は実家の空き家を見に行けなくなったと問い合わせが1.5倍になりました。時間や手間、移動の費用などをトータルに考えると、管理を業者に頼んだほうが結果的に安くあがったりします。

――放置して積み重なるコストやリスクも考えて、ということですよね

確かに、めんどうくさいとは思うんです。それでも、早め早めに動いてほしいと思います。悩んだり、迷ったりしたら相談するといい。私共のような団体もありますし、自治体が主催して空き家の相談会はいろいろなところで行われています。繰り返しになりますが、「親が施設に入りました。空き家になったので相談したい」では遅いんです。

伊藤雅一 NPO法人「空家・空地管理センター」理事。
同センターは、空き家・空地の管理のほか、各種調査やデータを公表、活用に関するコンサルティングを行う。渋谷区や所沢市などと自治体と連携し、セミナーや相談会を実施。東京都の「空き家利活用等普及啓発・相談事業」の実施事業者にも選定されている

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