はじめに
2020年12月9日に発表・発売を開始した2代目となるトヨタのFCV(燃料電池自動車)である「MIRAI(以下ミライ)」。すでに記事でも紹介していますが、そこで注目したいのが初代ミライの中古車です。ズバリ「一定の条件」を満たせばこれだけお買い得な中古車と巡り会うことは少ないかもしれません。年初企画に相応しいその魅力は“お年玉”級と言えるものです。
世界初のセダンタイプ量産FCV車
初代ミライは2014年12月15日から発売を開始しました。将来の有力なエネルギーのひとつである水素を空気中の酸素と化学反応させることで電気を発生させる昨今キーワードとしても取り上げられる機会が多い「電動車両」のひとつでもあります。
当時は話題となったミライですが、実際はそれ程多く売れることはありませんでした。理由はいくつかありますが、まず一番大きかったのが独自の水素燃料タンクを始めとしたパーツ類の生産能力が受注に追いつかなかったことです。
実際トヨタは当初2015年末までに約400台を目標にしていながら、受注好調により最長で2年近い納期になった時期もありました。しかしそこは高い技術力を持つトヨタです。生産能力を向上させるなどして徐々にその差を詰めていきました。
二番目としてそのスタイリングなどです。ひと目でFCVとわかるデザインは重要な要素ですが、トヨタも織り込み済みとは言え(当時としては)やや奇抜なデザインに賛否両論、乗車定員が4名というのも販売上のネックになっていました。
また実際、補助金などを使うことで500万円台で購入できた車両本体価格も723万6000円(発売当初)と決して安くはありませんでした。
そして三番目は水素を充填する「水素ステーション」の数の少なさです。水素ステーション自体の歴史は実験的な部分も含めてですが、2002年から実在しています。またステーションの設置が難しいエリアのために「移動式水素ステーション」なども開発されてきましたが、それでも基本となるインフラ自体は極めて少なく、また充填自体は法律で専任の作業担当者が必要なため、営業時間自体が短かったことも影響しています。
これらがFCVの普及を遅らせた理由の全てではありません。しかし、このネガの部分に対し政府も重い腰を上げ、2代目ミライの発売に合わせるように徐々に改善されつつあります。そこで注目なのが初代ミライの中古車なのです。
全国に40台強しかない希少価値車
旧型となる初代ミライは累計での販売台数は概ねですが1万台強と言われています。販売され流通されている車両の台数が圧倒的に少ないことはイコール中古車も発生しにくいということです。
筆者が今回、年末に調べたところ、全国で旧型ミライはわずか40台強しか流通していません。ちなみにこの物件は全てが「修復歴無し」です。
細かな分析はできませんでしたが、旧型ミライは法人需要が多かったのも特徴です。当時の小泉純一郎総理がトヨタの奥田碩会長(当時)とホンダの吉野浩行社長(当時)から両社の燃料電池車の大きなカギ(模型)を贈呈されるシーンが数多く報道されましたが、官公庁や企業、実際自分が所属する自動車業界のメディアでも数社が社用車として購入していました。これも実話ですが、東京都の芝公園にある某水素ステーションに9時の開店時間前に行くと、官公庁関係であろうと思われるミライが充填に来ている姿をよく見かけたことからもわかります。
一方、個人での購入に関してはやはりイノベーター層が飛びつきましたが、前述したようなインフラ問題もあり、手放した人もいるようです。実際筆者の知り合いも当時水素ステーションの営業時間が17時までだったこともあり、出張からの帰りに立ち寄りたくても営業自体が終了しており、わざわざ翌朝に出向く不便さもあったそうです。