はじめに
ZOZOTOWNは2.5倍の卵を産む!?
その会社の年間の純利益、これを生み出す金の卵の量として、株価がその何倍かを示すPERという指標があります。セブンイレブンのセブン&アイの場合はこのPERが22倍です。つまり投資家は「セブンはあと22年分くらいは同じペースで金の卵を産んでくれそうだ」と期待しているという見方ができるわけです。
ほかの小売企業のPERを見ると、マツモトキヨシやドン・キホーテから有力百貨店までだいたPERは16倍から20倍くらい。まあそれくらい先までなら今のペースでお金を稼いでくれそうだと投資家が考えているという数字でしょう。
そこで「スタートトゥデイは?」というとPERは(会社予想に対して2017年8月4日時点で計算すると)48倍ということになります。これはZOZOTOWNがほかの小売業と比較して、「将来的には2.5倍くらい金の卵を産んでくれそうだ」と投資家が考えているという水準です。
別の言い方をすれば、ZOZOTOWNの利益は近い将来に今の水準から「倍くらいは楽に増えてくれるのではないか」と投資家が考えているという見方もできるわけです。そして問題は「実際にそうなりそうかどうか?」という点にあるのです。
ZOZOTOWNの未来は盤石なのか?
実はZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイは小売業ではなくIT企業でもあります。そしてIT企業は一般に投資家の評価は小売企業よりも高いのです。
たとえば楽天は時価総額2兆円近辺の企業ですが、企業価値がイオンよりも高い理由はイオンよりも売上が好調だからではなく、ポイントやカード、広告などさまざまな切り口で利益を上げそうだということや、トラベル、電子書籍など新しい分野にビジネスを広げてくれそうだという期待感にあるのです。
スタートトゥデイが本当に1兆円クラブに定着できるかどうかについては、ここが大きな試金石となると思います。
スタートトゥデイが投資家から高く評価されているのは、ほかのIT企業系の小売業よりもその強みが長続きしそうだという点にあるのです。
具体的には若い女性に対してスマホという切り口でどの競争企業よりも支持される小売サービスを提供できているという事実を投資家は評価しています。
実際、四半期の取扱高が595億円であるにもかかわらず、連結純利益は55億円も稼ぎ出しているのです。つまり会社としての生産性が驚くほど高いのです。さらに自己資本利益率は2017年3月期で72.7%と競合他社を圧倒するレベルです。つまり資本の生産性も驚くほど高いのです。
一方で、ここから先の成長が見えないという課題をZOZOTOWNは抱えています。今の土俵では誰にも負けないほど強い。しかしアマゾンのようにほかの商材に商品を広げることも、ほかの国に進出することもスタートトゥデイには難しいと見られています。
この壁を突破できなければ、「ほかの小売業の2.5倍の期待感」で形成されている今の株価は維持できないかもしれないという点がスタートトゥデイの企業課題です。スタートトゥデイが1兆円クラブのメンバーとして留まれるのかどうか、今後の戦略に注目したいと思います。