はじめに
2021年後半は法人増税実施、インフラ投資は規模縮小も
一方、年後半に株式市場の下押し要因になりそうなのは増税です。バイデン氏はトランプ大統領によって35%から21%に引き下げられた法人税を28%に引き上げることを公約として当選しました。
コロナの感染が続く中で増税に踏み切ることは簡単ではありません。ただ、かつて前FRB議長で財務長官就任が確実視されているイエレン氏の愛弟子である米サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は10月13日の会見で、「実体経済回復の足取りが鈍く国民の多くが依然として失業状態にある中で株式だけが上昇しているのは不公平で、ウォールストリートが勝利しメインストリートが敗北している事例だ」との問題意識を示しています。
法人増税による景気対策の財源確保はマーケットフレンドリーと言われているイエレン氏やFRBも含め、コンセンサスが取れていると言えます。
上院における民主党の議席は共和党による議事妨害を防ぐ60には届いていませんが、財政調整措置という例外的な規定を用いることにより50の単純過半数で増税を行うことができます。
トランプ政権もこの財政調整措置を用いることで減税を成立させました。トランプ政権の減税が成立したのは発足から1年近くが経過した2017年12月であり、コロナの感染が引き続き拡大していることを踏まえても、バイデン政権による増税が行われるのは早くて今年の年末でしょうが、増税自体は高い可能性で実施されると筆者は考えています。
また、バイデン政権のインフラ投資拡大に期待する声もあります。しかし、バイデン氏の再生エネルギーなどを主体とした2兆ドルの投資に対しては民主党内でも反対意見が出ています。
増税実施に対して歳出が縮小すると、バイデン政権の財政運営が予想外に緊縮化してしまいます。議席が50対50で一人の造反も許されない状況ではインフラ投資の規模縮小を余儀なくされるでしょう。
予想外の緊縮財政で市場の期待剥落も
これまでのところ、株式市場は追加の景気対策への期待から上昇を続けています。しかし、増税はかなり高い確率で実施されそうですが、インフラ投資は大規模なものにならない可能性があります。
そもそも、家計向け給付、州政府支援、インフラ投資などは景気にはプラスなものの、株式市場に上場している大企業の業績を直接押し上げるものではありません。一方、法人増税は確実に企業利益を削ります。
S&P500の一株当たり利益はトランプ減税の際に大きく伸びましたが、その一部が巻き戻されることは覚悟すべきでしょう。年後半にかけてバイデン政権の財政政策に対する株式市場の期待剥落には注意する必要があります。
※内容は筆者個人の見解で所属組織の見解ではありません。