はじめに

金融緩和縮小の前倒しは?

また、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による資産購入額の段階的縮小(テーパリング)の前倒しも意識している模様です。昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、「雇用最大化と物価の安定という目標に向け顕著な進展があるまで資産購入額を維持する」というガイダンス(指針)が示されました。曖昧な表現ながら、テーパリング開始まではかなりの距離があることを示唆したとみられます。

ところが、最近、一部の地区連銀総裁から年内にテーパリングの議論を開始するよう望む声も聞かれます。こうした意見がある一方、パウエルFRB議長が時期尚早との見解を示していることから、早期のテーパリング開始は現実的ではないかもしれません。ただ、米国債利回りの上昇に対してFRBは無理に抑えようとせず、ある程度自然体という姿勢を続けるものとみられます。

過去を振り返ると、ドル円相場と米長期金利の動きは必ずしも連動していません。しかしながら、昨今、米長期金利が為替市場のテーマとして注目されているだけに、上昇トレンドが続くのであれば、相応にドル高を後押しする公算が大きいでしょう。
 

エネルギー価格上昇が与える2つの効果

次に注目に値するのが国際商品価格の上昇です。年明け後、WTI原油先物が節目の50ドルを回復したことをはじめ、その他資源や穀物が軒並み騰勢を強めています。折からのドル安と世界的な過剰流動性が商品市場への資金流入を加速させているようです。

言うまでもなく、日本は大量の資源や穀物を輸入している国です。国際商品価格の上昇は貿易収支の悪化につながりやすい構造と言えます。昨年は、原油価格が値崩れした結果、春以降に日本の輸入金額が大きく減り、円高ドル安を後押ししました。

翻って、今後は原油をはじめとする国際商品価格上昇に伴って輸入金額が膨らむことが予想され、ドル円相場における実需の資金バランスは次第に円売りが優勢になっていくものと思われます。

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