はじめに

「万人に好かれるように行動する“いい人”の人生は、窮屈で不自由で、つまらない!」と説く書籍、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』が好評です。著者は、会社員時代から不動産投資で資産を築き、会社経営者を経て、現在はコンサルタントやビジネス書作家として活躍する午堂登紀雄氏。

「いい人」でいようとすることがどれだけ無意味かが、軽妙かつ痛快に語られる本書では、「お金」についても1章が割かれています。曰く、「いい人はお金に恵まれない。いい人ほど貧しくなる」。

午堂氏に、自由な人生を生きるためのお金との向き合い方について、話を聞きました。


お金が寄ってこないのは「お金の話」をしないから

──著書の第3章「お金」の冒頭に、「“いい人”をやめられない人はお金に恵まれない」とあります。なぜでしょう?

午堂登紀雄氏(以下同):「いい人」は、お金に対してネガティブなイメージを持っています。お金の話をすると、「いやらしい感じがする」「お金にうるさい人と思われてしまう」と考えているんです。

つまり、お金の話をすると嫌われるという思い込みがある。他人に嫌われることは、いい人にとってもっとも避けたいことですから、お金の話を避けるんです。

──たしかに、お金の話はいやらしいと考えている人は多いような気がします。

本当に不思議ですね。私のいう「お金の話」とは、表面的な「儲け」の話ではありません。稼ぐことができた原因や根拠について、興味を持って考えることなんです。

会社の儲け話は、みんな日常的にしているはずです。「あの企業の業績がよいのは戦略がよかったから」とか、「競合他社はこんなビジネスモデルで儲けているらしい。ウチだったらこうすれば儲かるんじゃないか」などと、みんなで一生懸命議論しますよね。これも「お金の話」です。

お金の話をすると、経営戦略やマーケティングなどの知識がレベルアップしていく。MBAもそうです。MBAは企業が儲けるための方法論なのに、「いやらしい」という人は少ない。

企業も個人も、お金を稼ぐことに興味があるはずなのに、個人がお金を儲けた、稼いだ、という話になると途端に「いやらしい」って感じる人が多い。おかしいと思うんですよね。

個人のお金の話でも同じように、「なぜあの人は何億円も資産ができたのか」「なぜ株で儲けられるのか」という議論をして、その背景や判断の根拠を考えてみると、お金に関する知識が増えて、興味も出てくると思うんです。だから、もっとお金の話をしようと言っているわけです。

──話をしないから知識も深まらず、お金が寄ってこないと。

そうです。お金の話を避けるのは、実はお金にとらわれているからです。まだ未練が残っている、昔振られた恋人の話をしたくないのと同じです。お金に関心のないふりをしていても、本当は、心の中では「お金のあるなしが人の優劣を決める」というくらいにこだわっている。

まずはお金に対する「いやらしい」という先入観を捨てて、もっとオープンに話すことができれば、お金との適正な距離感が生まれて、客観的に考えられるようになります。

貯めることが目的になってはいけない

──いい人によく見られる「お金に嫌われる行動」はありますか?

典型的なのは、節約と貯金です。「いい人」は常識人ですから、「なにかあったときのためにお金はきちんと貯金するもの」という親の教えに忠実です。貯めること自体が目的になっていて、「貯めたお金を有効活用して人生を豊かにする」ということに思考が向かわない人が多い。

節約と貯金が大好きで、「30歳で1,000万円貯めました」といったって、「それでどうするんですか?」と聞くと、「いや、もしものときのために」と。

もちろん、もしものときの保険という機能はあります。でも、「もしも」とはどんなときのことか、そのときにいくら必要か、まったく計算していない人がほとんどです。1,000万円じゃ到底足りないかもしれないし、多すぎるかもしれないのに。

お金は、幸せのなるための道具にすぎません。ただ貯めるだけではなくて、今よりもハッピーな人生を送るために自己投資するとか、上手に使ったほうが、より満足度の高い生き方になると思っています。

──いい人は貯金はするけど投資はしない、と。

いい人は、「失敗してはいけない」という固定観念が強いんです。つまり挑戦をしない。お金に関してもそうで、1円でも損するのがいやなんですね。1回でも負けたくない。これもまたおかしな話です。

たとえば、スポーツをする人は、うまくなるために練習します。シュートを外しても外しても、練習すればそれだけうまくなるじゃないですか。仕事もそうです。若い頃に多くの失敗を経験しながら、成果を出せるようになっていく。上達のためには練習が必要です。

でも、なぜか投資に関しては、練習もしないのに全戦全勝したい。ものすごく虫のいい話ですよね。それで、1回でも負けるとあきらめてしまう。

にもかかわらず、買った途端に価値が1割下がる新築マンションを3,000万円で買って、300万円損しているのにまったく意に介さない。こういう人に限って、儲け話にウラも取らずに一口のって、失敗したりします。失敗しても、それを教訓にして次に活かせばいいんですが、そうせずに誰かのせいにする。

いい人には「自己責任」という概念が欠けているんですね。誰かが何とかしてくれるという発想がある。でも、結局は誰も何もしてくれないから、国に文句を言ったり、会社のせいにしたりする。依存体質の傾向が強いように感じます。

また、いい人は、他人の言うことをむやみに信用し過ぎることがあります。銀行に対して全幅の信頼を持ち、窓口で手数料が高い投資信託を買ったり、企業の広告宣伝を鵜呑みにして効果が怪しい健康食品を買ったりする。人の話や常識を、「本当か?」「なぜそうなのか」と疑い、本質を問うような思考をしないのです。

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