はじめに
老後破綻になる家庭の特徴は「高額な生活費」
まず、老後資金が思っていたより早くなくなってしまうご家庭の特徴を平たくいうと、「生活費支出が高い」です。もしかするとお子さんが独立され、生活費が減って今の状態なのかもしれませんが、不思議なもので、お子さんにかかる支出がなくなっても支出の総額が変わらないご家庭も多いのです。
理由はどうあれ、一般的に考えると、年金受給額は妻が専業主婦のご夫婦で月に約22万円ほどです。もちろん収入状況により上下しますので、ご相談者もそうだとは言い切れませんが、目安にしてください。
老後の生活費は、今の家計から住宅ローンの支払いが無くなるのなら、36万円で暮らせると見込めます。この36万円と年金受給額の22万円の差額の14万円が、65歳以降、1カ月に不足する生活費です。
生活なので支出は一定とはならないものですが、それをもとに95歳までの30年間の不足する生活費を考えると、5,040万円(14万円×12カ月×30年=5,040万円)にもなります。それに60歳から65歳まで働かず、収入のない5年間の生活費2,160万円を加えると、7,200万円。3,000万円の蓄えでは全く足りないことが分かります。
これを改善するにはもっと頑張って貯金をするとともに、生活費を圧縮し、生活費の補てんをする金額を減らすことにも取り組んでいただきたいもの。ご相談者の家計は全体的にメタボ家計で、食費、水道光熱費、通信費、交際費など比較的支出が多いと思われる費目が目立ちます。全体的に支出を絞り、月の生活費を1万円減らせると、老後までに準備する生活費は360万円少なくてすみます。3万円減らせれば1,080万円減らせます。
働く期間を延ばす
2021年4月1日から「高年齢者雇用安定法」の改正が施行され、70歳までの雇用が企業の努力目標になりました。今まで以上に長く働ける可能性が高まっているのです。
データを見ると、60~64歳の就業率は68.8%ほど。65歳から69歳は46.6%です。(「令和元年版高齢社会白書」より)この割合は年々増えており、10年前に比べそれぞれ10%ほど増えています。雇用形態は様々でしょうが、60代後半でも半数近くが何らかの形で働いているのです。60歳でスパッと「辞める」と決めるのではなく、柔軟に働くことを検討してみてもよいと思います。
生活費の負担が減ると、老後資金の必要額も減ります。できれば再雇用など会社の制度を利用して働けるとよいのですが、それが精神的にも肉体的にも苦痛であるなら、パートやアルバイトのような働き方に変えてもよいと思います。
また、ご相談者だけではなく、妻も少し働いてみるなど、収入を得る方法は様々考えられますから、状況に合わせた収入の得かたをご夫婦で相談しておいてはいかがでしょうか。
老後資金を長持ちさせるために
これまで、支出を減らすこと、収入を得ることに触れてきましたが、老後資金を長持ちさせるには3つのコツがあります。
(1)収入を得る
(2)支出をコントロールして下げる
(3)すぐに使わないお金を運用して金額が目減りすることを防ぐ
以上の3つです。
取り掛かりやすいところからはじめてよいのですが、1つだけを見て「5万円節約しなくちゃ」「バリバリ稼がなくちゃ」となる必要はありません。「3万円を稼いで2万円節約する」というように柔軟に考え、バランスを取りましょう。
今回お伝えしたことに取り組んでいただければ、ご相談者のライフプラン表も良いほうへ変わってくるはずです。支出削減、収入を得続けることの両方を意識し、ご夫婦で納得のいく着地点を見つけていただければと思います。
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