はじめに
サラリーマン時代の2013年より不動産投資をスタートして、アパート・マンション6棟、戸建て5戸、区分マンション1戸、太陽光発電7基で合計71部屋(過去に14部屋売却済)を運営しており、家賃収入・売電収入が6,000万円超、キャッシュフローも年間3,000万円以上という越谷大家こと、今岡純一さん。
今岡さんの投資手法の大きな特徴としては、不動産投資以外の副業を複数組み合わせていること。物販などの副業収入も合わせると年収は1億円を超し、いくつもの「収入の柱」を持つのが重要だと考えています。前回、前々回は、成功する不動産投資や副業について聞きましたが、今回は今岡さんから、初心者に伝えたい「不動産投資における、9つのリスク」について聞きました。
――不動産投資で成功する人もいれば、失敗する人もいます。その差は何だと思いますか?
失敗の理由にもいろいろあると思います。不動産業者の話を鵜呑みにして、失敗物件を買わされるパターンが多いですが、そもそもどんな投資・副業でもリスクがあります。どんなリスクがあるのかを知っておけば、失敗を未然に防ぐことができます。私が考える不動産投資のリスクは次の9つです。
【9つのリスク】
・負のレバレッジも大きくなる
・損切りがしにくい
・コストが高い
・流動性が低い
・他事業に比べて収益性が低い
・収支悪化リスクがある
・高値掴みをする可能性がある
・アナログな業者が多い
・悪質な業者の存在
9つのリスクとは?
――1つ目、「負のレバレッジも大きくなる」から解説をお願いします。
よく言われる不動産投資のメリットに「融資によるレバレッジ」が挙げられます。少ない元手でも融資を使うことで大きな投資を行うことができますが、リスクとして負のレバレッジも大きくなるのです。間違った物件にレバレッジを効かせて購入してしまうと、大きな負債を背負うことになってしまいます。実際、そうした状況に追い込まれてしまった人が非常に多くいます。
――間違った物件を買ってしまうと、どのような状況になりますか?
購入時よりもはるかに安い金額でしか売れなくなります。最悪のケースでは、売却しても負債が残ってしまい、その分を自己負担しなければなりません。そういう意味で、レバレッジとは「諸刃の剣」なのです。
――2つ目、「損切りがしにくい」については?
負のレバレッジの話をしましたが、単価が高いこともあり、大きくレバレッジをかけなくても損をすれば額が大きくなってしまうのが不動産投資の怖さです。また多くの投資家は「損切り」に抵抗があります。例えば、区分マンションの失敗物件を買ってしまったとき、200万円を出せば損切りできる状況でも、判断を後ろ倒しにして負債を拡大させてしまうのです。多くのサラリーマンは赤字を給与で補填しますが、最悪の場合(リストラや病気による休業など)、支払い不可能となり破綻すらあります。
――3つ目、「コストが高い」については?
管理費や修繕費用、広告費などの入居募集費用、定期清掃費、固定資産税・都市計画税といったコストがかかります。得たキャッシュフローを使ってしまい現金が枯渇していると、いざというときに払えなくなってしまうので注意が必要です。逆に修繕費を織り込んで、計画的に資金を用意できれば問題ありません。
――4つ目、「流動性が低い」については?
不動産は、「売ろう!」と決断しても現金化までに数カ月を要します。株やFXと違ってボタン一つで売れるわけではありませんし、売り急ぐと買い叩かれて損をする可能性もあります。タイミングを見てベストな価格で売ろうとすれば、何年もかけて買い手を見つけなければならないこともあります。とはいえ、この流動性の低さは逆にメリットだともいえます。取引が成立しにくい対象だからこそ、価格の乱高下がないからです。
――5つ目、「他事業に比べて収益性が低い」については?
例えばラーメン屋など飲食業であれば、上手くいけば半年程度で元本を回収できる可能性もあります。しかし不動産は良くも悪くも収入のブレ幅が少なく、家賃収入が短期的に激減しませんが、数倍に増えることもありません。また、安く買っていなかった場合に損益分岐で考えると5年、10年でトントン、利益を出そうとすると15年、30年とかかる可能性があります。私の場合は相場よりも安く買っている物件が多いため、買った瞬間から売っても利益が出ますが、初心者のうちからこの手法はなかなか取れないでしょう。
――6つ目、「収支の悪化リスクがある」については?
一般の事業に比べて住居系賃貸は家賃下落のブレ幅が少ないと言いましたが、それでも外的要因によって収支が悪化するリスクはあります。例えば、物件近くの大学や工場が移転したといったケースです。テナントを貸している大家さんであれば店舗の業績が悪化し、退去または夜逃げをされるなどのリスクです。また、築年数が古くなり、修繕が必要になる回数が増えたり、家賃の下落したりなども当然あります。
――7つ目、「高値掴みをする可能性がある」については?
これも他の事業と同様ですが、勉強をしていないと悪意のある人や業者に騙される可能性があります。不動産は「一物一価」といって1つの物件に対して自分たちで値段を決められるため、指値ができるメリットがある一方で、高値を設定することもできてしまいます。ですから自分で値段を選定できる力を持たないと、高値掴みをしてしまいます。
――8つ目、「アナログな業者が多い」については?
メールやSNSで連絡を取るよりは、未だに電話連絡が主流で、FAXを使っている業者もたくさんいます。不便な点もありますが、だからこそニッチな情報を取れるというメリットもあります。
――最後に9つ目、「悪質な業者の存在」については?
赤字のワンルームマンションを売る不動産業者、不当な利益を乗せる三為(さんため)業者、裏でマージンを取ろうとしている不動産業者がいるので注意です。つい最近も安い物件を紹介している業者がいたので問合せてみたら、コンサル代を当たり前のように請求してこようとしました。100万円の物件に対して100万円のコンサル費と仲介手数料も取るので、かなり悪質です。
よくあるのはリフォーム代を管理会社が上乗せすることです。手数料程度ならともかく、相場を無視した多額の請求をするケースもあります。このような「中間搾取」によく出会うのが、不動産業界の特徴です。「取れるところからいくらでも取ってやれ!」といった考え方が常識になっているのでしょう。しかしどう考えても、不動産業界の悪しき慣習の一つです。
リスクヘッジのための処方箋
――こうしたリスクをヘッジするには、どうしたらよいでしょうか?
不動産投資を学び知識をつけることは自衛になります。本をはじめセミナー、動画などたくさんの勉強方法があります。また、業者ではなくて先輩大家さんなど実際に経験している人から話を聞きましょう。その際には、「成功していること」「今も現役の投資家であること」を重視してください。不動産の市況や融資などは、その時々で変わりますから、過去の成功談は役に立たないケースも多いです。
また、よく不動産投資をする際に家族や友人に相談する人がいますが、不動産投資を知らない人や失敗している人に相談をしても、参考になる答えは返ってきません。とくに不動産となると「怖い」「絶対に失敗する」といった最初からネガティブな発言をする人が多いです。しかし、修繕費や税金、将来的な出口まで、すべての数字を計算してから判断すれば、大きな失敗をする可能性は低いといえます。先ほど申し上げたとおり、不動産投資は想定以上の利益を上げることが難しい一方、株やFXほど収支のブレにさらされる心配が少ないからです。
くわえて、これは私の持論ですが、不動産投資だけでなく複数の投資・副業を組み合わせることでさらにリスクヘッジができます。特にサラリーマンの方は、まずは給与以外の収入の柱づくりを、何か一つでもいいから始めることをお勧めします。