はじめに
「伝える手段」はほかにもさまざま
「電話」のよさは即時性と双方性
電話のよいところは、相手の反応がすぐにわかることです。訪問するよりも手短に気軽にやりとりができますし、メールで書きにくいことも伝えやすくなります。
また、相手にメッセージが届いているかどうかが、その場で確認できるのも電話のメリットです。
メールのように、気づかないうちに迷惑フォルダに入っていたり、システムの不具合で届かなかったりということはありません。「遅れます」というような急ぎの連絡はメールではなく、電話を使うのが賢明です。
確定情報、重要な情報は「書面」で伝える
口頭のコミュニケーションは重要ですが、書面がそろうことで次の段階に進む仕事もたくさんあります。
たとえば「この仕事を50万円で受注する」というような金銭が関係する内容には、正式な書類や請求書でのやりとりが必要です。また、大人数が関わるイベントの案内などは、口頭で伝えていたとしても、あらためて書面での案内が必要です。
また、会議や打ち合わせでは「議題表(アジェンダ)」を使って議題を明確にして進行することで、議論の迷走を防ぐことができます。
さらに、決まった内容について「いつ、誰が、何を、どのようにする」のかを、議事録にしておけば、「じゃあ、そういうことで」となんとなくまとまったものの、その後、具体的にものごとが進まない……ということを防止できます。
「微妙なニュアンス」はメールでは伝わらない
メールは便利なものですが、それだけに頼らないようにすることが大切です。
メールで伝えられるのは言語情報だけです。書き言葉だけで微妙なニュアンスを伝えるのは、それほど簡単なことではありませんし、転送されて困るような「デリケート」な内容には向きません。
また、ちょっとした意見を伝えるとき、メールは口頭よりも厳しい印象を与えます(絵文字や顔文字はビジネスメールには使えませんね)。
ほかにも宛先の入力間違えや編集途中で送信ボタンを押してしまうなど、ミスのリスクもあります。微妙なことや込み入った意見を伝える場合は、メールよりも対面でのコミュニケーションを選択したほうが賢明です。
また、コミュニケーションは人と人との関わり合いなので、メールだけでの関わりは対面に比べるとどうしても印象が薄くなってしまいます。会ったこともない相手へのメールは、「スルー」されてもしかたがないと思っておいたほうがいいかもしれません。
ひとつの方法だけに偏らないことが大事
相手が「口頭」と「文章」のどちらを得意としているのか、すぐにはわかりませんし、3人以上の打ち合わせでは、「聞き手型」と「読み手型」が混在することもあるでしょう。また、伝達手段の方法にもメリット、デメリットがあることがわかりました。
相手に「伝える」必要があるとき、以上のことを意識してみることで、今までとは違ったコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。
本書のなかには、さらに「適切なコミュニケーションの距離の取り方」や「簡潔、明瞭に伝えるコツ」など、「伝えたつもり」で失敗しないためのノウハウが満載です。その内容を実践すれば、不安ばかりだった「一方通行」のコミュニケーションが少し楽しいものに変わるかもしれません。
『「その話、聞いてないよ」と言われない伝え方』
「一生懸命伝えたのに、なぜ相手に響かないのか?」と悩むすべての人に、注いだ時間、労力をムダにしない効率的なコミュニケーション術を解説。「簡潔に伝わるコツ」「OKされやすい依頼」「最適な伝達手段の選び方」など5つのポイントを伝授します。