はじめに
消費者物価指数に対するガソリンの前年同月比寄与度は+0.35%以上?
毎日ニューヨーク原油市場で取引されているWTI先物価格の、昨年の値動きを月次で確認してみましょう。
2020年1月が57.53ドル/バーレルで高値でした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界的に経済活動が落ち込んだ影響で、4月は16.70ドルの安値まで大きく低下しました。8月には42.39ドルまで一旦上昇した後、9月10月とともに39ドル台で推移しました。その後は上昇に転じ、今年2021年は2月で59.06ドルまで上昇しています。3月10日の終値は66.02ドルとさらに上昇しています。
また、国内のエネルギー価格の代表として、資源エネルギー庁の全国平均のガソリン価格(レギュラーガソリン)の動きをみてみましょう。
2020年では1月20日時点の151.6円/ℓが高値でした。その後、緊急事態宣言発出で、ガソリンの需要も減少し、5月11日時点の124.8円/ℓが安値になりました。その後、8月11日時点の135.6円/ℓまで持ち直した後、130円台半ばでの推移が続きました。そして、11月16日時点の132.5円/ℓから上昇傾向で、2021年3月8日時点の146.1円/ℓまで、15週連続の値上がりが継続しています。直近の146.1円/ℓは2020年5月11日時点の124.8円/ℓより17%高い水準です。
全国消費者物価指数の直近1月分のガソリン価格の前年同月比は▲9.5%です。全体を1万とすると、ガソリンのウエイトは206です。1月分では前年同月比寄与度の▲0.21%、消費者物価指数の前年同月比▲0.6%のうち3分の1押し下げていました。5月分が仮に+17.0%の上昇になったとやや控えめに仮定すると、前年同月比寄与度は+0.35%の上昇要因になります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年の経済活動の水準が大きく変動していることから、今年は様々な「前年比」のデータを読むときに注意が必要です。ひるがえせば、昨年はそれほど経済活動が異常事態であったとも言えます。
身近なデータも“前年比”には要注意
身近なデータの前年比にも早速、変化が出てきたものがあります。2020年のJRA(日本中央競馬会)の売得金・年初からの累計金額の2020年は前年比+3.5%と9年連続の増加を維持しました。
2020年は2月29日から無観客レースになりました。当初は競馬場に来場する人の馬券購入がなくなり売り上げが急減しましたが、ネットでの馬券購入が増加し、5月初めを底に売得金・累計前年比が回復したのです。2021年では年初からの累計金額は2月21日時点までで+0.6%と小幅な増加でした。
しかし、2月28日時点までで+3.5%と急に伸び率が高まりました。比較対象に無観客レースで売り上げが急減した時期が入ってきたためです。3月7日時点まででは+5.0%まで伸び率が高まりました。
今年の売上も10年連続増加に向け、順調に推移していくと思われますが、前年比を見た場合、年末に向けては伸び率がそれほど伸びない、あるいは鈍化する時期も出てくるでしょう。今年はデータを見る時は、表面的な伸び率だけでなく、総合的な判断が必要だと思われます。