はじめに

黄砂の季節がやってきました。3月15日には中国で大規模な黄砂が発生し、中国中央気象台は、“ここ10年で最も強烈で範囲も広い黄砂”と発表しました。早速、航空便が欠航するなど、北京では交通機関への影響も見られました。

黄砂とは、中国の砂漠などで強い風で巻き上げられた砂が、偏西風にのって飛んでくるものです。今回は中国内陸部にあるゴビ砂漠で強風が吹いたため、大量の砂が巻き上がったことが原因のようです。

黄砂は日本まで飛来し、洗濯物が汚れたり、視界が悪くなるなど、私たちの身近な生活にも影響を及ぼします。そして、意外に思うかもしれませんが、我が国の“株価”の行方も左右するようです。

今回は黄砂と株価との関係を紹介します。


黄砂観測日には株価が下がる?

まずは実際に、黄砂と株価の関係をデータからみて見ましょう。気象庁のウエブサイトから は、1967年から日本で黄砂が観測された日が分かります。そこで昨年までの東京で黄砂が観測された日の株式市場の騰落率を集計してみました。

その結果、黄砂観測日の日経平均株価の平均騰落率は-0.59%と下落しました。同じ期間で黄砂が観測されなかった日の騰落率を平均すると0.03%とプラスだったので、「黄砂が観測される日は下落、観測されない日は上昇の傾向」が見られたことが分かります。

ではなぜ、このように黄砂と株価に関係があるのでしょうか。これには大きく2つの要因が考えられます。

1つ目が実際の経済に与える影響です。黄砂対策でマスクや目薬が売れるなど景気へのプラスもありますが、呼吸器などの人体への影響を避けるため外出を控える人が増え、トータルでは経済活動全体へのマイナス影響が考えられます。

ただ、こうした経済を通じた株価への影響は黄砂飛散の当日の株価を左右するというより、月単位などもう少し長い期間で株価に織り込んでいく部分が大きいでしょう。こうした分析結果も後ほど紹介します。

むしろ筆者は、2つ目の要因である“行動経済学”の観点からの影響が強いと見ています。

「行動経済学」を平たく言うと、人間の行動はその時の気分に左右されるため、株式を買ったりする投資も気分の影響を受けてしまうということです。2017年にシカゴ大学の行動経済学の権威、リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことで、さらに大きな注目を浴びています。

黄砂は、健康な人でも咳が出たり、目や肌、耳の穴がかゆくなることがあるようです。さらに、微生物や金属、化学物質など、黄砂の中には多くのアレルギーを引き起こすものが含まれています。黄砂アレルギーを起こす人もいますし、特に春は花粉飛散の時期とも重なり花粉症を悪化させたりもするようです。

このような症状が出たりした投資家は、なかなか株式投資に前向きな気持ちにもなりにくいでしょう。黄砂観測日の株安にはこうした影響が大きいのではないでしょうか。

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