はじめに

給付型奨学金の収入基準は大学進学年度の2年前の所得となる

今回のご相談のゴールは、娘さんが大学進学する際に「高等教育の無償化」を利用したい。そのための収支バランスをお知りになりたいということですね。はじめに申し上げておきますが、娘さんが大学に進学される10年後の制度がどうなっているのかは分かりません。税制改正や教育に関する支援策に変更があるかもしれません。参考として現行制度に基づきお話させていただきます。

まず、2020年4月から始まった「高等教育の無償化」は、要件を満たすことで、返還義務のない「給付型奨学金」と「授業料や入学金の免除・減額」の支援が受けられます。

相談者様が希望されている「年金を繰り上げて住民税非課税で教育の無償化を利用する」ための収入基準は、申込み年度の前年(表内赤枠で囲んだ相談者様67歳、娘さん高校2年生)の世帯収入をもとに決定する住民税の情報によって行われます。このことから67歳時の収入(年金額等)が住民税非課税となる所得内に収まることが要件の1つとなります。

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参考までに住民税非課税(東京23区の場合)の計算方法をお伝えします。

【東京23区・令和3年度の計算式】
均等割と所得割のどちらも課税されない場合(非課税)
●前年の合計所得金額が区市町村の条例で定める金額以下の人(東京23区では以下のとおり)
1.同一生計配偶者および扶養親族がいない人 45万円
2.同一生計配偶者または扶養親族がいる人
35万円×(本人+同一世帯配偶者+扶養親族数)+31万円

仮に相談者様が東京23区在住で、令和3年度の計算式が今後も続いたとした場合、67歳時の合計所得(年金+給与等)が136万円以下(35万円×3人+31万円)であれば住民税非課税世帯となります。相談者様が年金を繰り上げる際の参考にして頂ければと思います。ちなみに相談者様の満額年金165万円の所得は55万円(165万円-公的年金控除額110万円)≦136万円となります。お住まいの市区町村の詳細内容や住民税非課税によって優遇される制度などは随時確認しておいてください。

では、ここから「繰り上げ年金」について詳しく見ていきましょう。

繰り上げ請求するときの注意点

老齢年金は原則として65歳から受け取ることができますが、それより早くもらう手続きをすることを「繰り上げ請求」と言います。最大60歳まで1か月単位で繰り上げ請求することができます。なお、老齢厚生年金を繰り上げ請求する場合は、老齢基礎年金も同時に行う必要があります。

それでは年金を繰り上げる際のメリットデメリットから確認していきましょう。

◆繰り上げ受給のメリット
1.すぐに収入の確保ができる
2.繰り上げした時から16年8か月(2022年4月以降に受取開始の場合は20年10か月)までは繰り上げした年金総額のほうが多くなる。(加給年金や振替加算は考慮していません)

◆繰り上げ受給のデメリット
1.減額された年金額が一生涯続く。
請求の取消しはできません。
2.障害基礎年金を請求することができない。
障害基礎年金は、65歳以前に初診日がある傷病が対象のため繰り上げ請求をすると年金制度上は65歳になったものとみなされ、その後は障害基礎年金の請求ができません。
3.遺族年金と繰り上げ受給の老齢年金は併給できない。
65歳までは減額した年金と遺族年金のどちらか選択となります。
詳細は、日本年金機構「繰り上げ請求の注意点」のページでご確認ください。

年金の繰り上げ受給はデメリットも多く、特に相談者様は持病がおありですので障害年金の請求に制限があることなど知っておくことが大切です。

具体的に年金の繰り上げ時期をシミュレーションしてみましょう。

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