はじめに
不動産への直接投資とJ-REIT投資の一番の違いは?
ところで、不動産への直接投資とJ-REIT投資の一番の違いは、背負うリスクの大きさではないかと思います。
例えば、個人名義で実物不動産に直接投資する場合を考えてみましょう。投資した不動産を、購入価格(諸経費・金利も含む)よりも高く売却することができれば、その利益のすべては個人投資家が受け取ることができます。しかし、融資の借入も、不動産の所有も個人名義で行うことになるので、もし購入価格を売却価格が下回ってしまったら全て個人の損失になりますし、融資が売却金額で返済できなければ、給与や他の資産の売却などの収入から補填しなければなりません。
また、投資額が大きいほど、多くの高品質な優良不動産を購入し、分散投資ができるようになります。しかし、個人の保有する金額は一般的には少額であるため、そのような分散投資は難しいものがあります。
一方、J-REITは、サラリーマンなどの方が個人で購入する不動産よりも、規模が大きく、建物グレードが良い、優良不動産を保有しています。J-REITは2021年2月現在で62銘柄、時価総額は15兆6500億円、保有物件は合計4,304物件に達し、用途別(図表3)及びエリア別(図表4)の構成比率はグラフの通りです。投資家は、投資証券を購入することにより、各REITの不動産ポートフォリオに応じて実質的に多様な不動産に投資しているのと同じ効果を得ることができます。
また、J-REITの場合は、投資口価格も安いものなら数万円なので、予算に合わせて少額からの投資が可能です。J-REITに投資する投資信託を購入する場合は、さらに少額で投資できます。勿論、価格が下落し、売却時の投資口価格が購入価格を下回ってしまい損失を計上することもありますが、それ以上の支払いを負担する必要はなく、価格の回復をじっと待つこともできます。
さらに、J-REITの保有物件は不動産のプロが運用してくれるので、はじめて不動産投資をする個人よりも安定した収益をあげる可能性が高くなります。実物不動産の運用は意外に手間がかかるので、そのわずらわしさから解放されるのも利点の1つと言えるでしょう。
J-REITへの投資は、投資口価格が株式のように日々刻々と変動するので、売買するタイミングも大切になります。しかし、個人の実物不動産投資にはない多くの利点があり、リスクも相対的に低いように思います。もし、あなたが不動産投資を考えているのなら、ローンを組んで不動産を購入する前に、少額でも投資可能なJ-REITも検討してはいかがでしょうか。