はじめに
7月に比べ、8月は雨が続き、真夏とは思えないほど寒い日もある今年――。15日連続で降水を観測したのは1977年以来、40年ぶりだそうです。
そんな涼しい日が続く毎日ですが、実は夏になると例年よく売れる意外な製品をみなさんはご存知でしょうか。
夏のイメージからはなかなか連想できない「正露丸」の売り上げが伸びるのだそう。
100年以上の歴史を持ち、独特の“ニオイ”を放ちながらも多くの人をお腹のトラブルから救出してきた正露丸。なぜ夏に売れるのでしょうか?
8月に売り上げのピークを迎える「正露丸」
エアコン、ビール、かき氷……夏によく売れるものには涼感が感じられるものが目立ちます。
そんな夏真っ盛りの今、ラッパのマークでお馴染みの正露丸が、売り上げのピークを迎えているんだそう。
大幸薬品・広報部の高梨さんによると「例年、梅雨明け頃から徐々に売り上げが増加し、8月にピークを迎える傾向がみられます」とのこと。
寒い時期にお腹が痛くなる、というのであればその理由は容易に想像つきますが、どうして8月なのでしょうか? 高梨さんは次のように話します。
「熱中症予防のために水分を取り過ぎた結果、胃腸がダメージを受け下痢を引き起こしたり、冷たい飲み物や食べ物で身体が冷えたり、熱帯夜をしのごうとクーラーや扇風機をつけて就寝されてお腹が冷えたりと、夏ならではの生活習慣から下痢の症状が誘発される可能性が高いのだと考えられます」
猛暑じゃなくても売り上げに大差なし?
暑い夏だからこそ、身体を冷やしすぎてしまうというのは納得ですが、梅雨に逆戻りしたかのような雨が連日続いた今年。
夏に売れる製品を抱える企業の本音としては、猛暑が続いたほうがうれしいのでは?
「先ほどお話したような理由から夏にご購入が増えますが、実は猛暑だから売り上げが伸びるというわけではないんです。猛暑でなくても毎年8月は売り上げが伸びるので、あくまでも“夏ならではの生活習慣”が売り上げにつながっているのではないかと思います」(高梨さん)
ほかにも、夏休みの海外旅行などに“お守り”として、携帯する人が多いことも売り上げを伸ばしている要因と考えられるそう。
ピークとなる8月には及びませんが、常備薬として買い置きされたり、忘年会で盛り上がる12月にも売り上げの増加が見られるといいます。
“あのニオイ”を抑えた、半世紀ぶりの新製品
100年以上もの歴史を持ち、各家庭に常備されてきた正露丸。名前を聞くと思い起こされるのはあの独特のニオイ。少し苦手……という方もいるかもしれませんが、あのニオイがあるからこそ、効き目があると信じていた人もいるのではないでしょうか。
昔からある黒い丸剤の正露丸は、今もなお年配層を中心に根強い支持があると高梨さんは話します。
一方で、10代や20代の若年層ほど下痢になりやすい体質でありながら、約半数近くの人がこれまで止瀉薬(ししゃやく)を使った経験がないことが、同社の調査により判明。
そこで今年、正露丸シリーズになんと約50年ぶりに新タイプの製品が投入されました。若年層をターゲットとした『正露丸クイックC』は、あの独特のニオイを抑えた液体カプセルです。
「当製品は小粒でニオイも少なく、飲みやすいのが特長です。液体カプセルなのですばやく溶け出し、胃で吸収され、急な下痢などお腹のトラブルに効果を発揮します」(高梨さん)
ニオイの強弱が胃腸薬としての効能に影響を与えることはないそうですが、同社のもとには「ニオイがなくて物足りない」「ニオイがないとさみしい」といった旧製品の特徴を惜しむ意見も届いているそう。
「正露丸ブランドを印象づける大きなファクターとして、多くの方々に製品のニオイに愛着を持っていただいていることをとてもうれしく思います。従来品も併売していますので、ライフスタイルやお好みに合わせてご使用いただけますと幸いです」(高梨さん)
(文:編集部 土屋舞)