はじめに
2020年12月に生まれた“第3の働き方”
地方は都市部に比べて商圏が小さいため、儲けのためのビジネスがなかなか成立しません。一方で、超高齢化や人口減少により、社会課題は深刻化しており、地方で暮らす人々のための事業サービスが必要という、二律背反な事態に直面しています。
そのようななか、地域の生活に根ざしたビジネスを可能にする「協同労働」という働き方が、2020年12月に整備されました。
協同労働(労働者協同組合)は、雇用労働とも、自営とも異なる第3の働き方です。働く人自らが出資して所有者となり、経営と管理の責任を負い、さらには仕事にも従事します。誰もが、経営者であり、労働者でもあり、みんなの意見をもとに事業を運営していく、そんな働き方です。
協同労働に関する労働者協同組合法は、2020年12月に成立したばかりです。この法案をめぐっては、全国の市区町村のうち954もの議会で、早期制定を求める意見書が採択されています。地方で雇用を生み、事業を続ける新たな形態として、大いに期待されているのです。
儲けのビジネスではなく、支え合いのビジネス
協同労働は、株式会社のように利益をあげることが目的なのではなく、生活にねざした困りごとを自分たちで解決するためのビジネスです。
2020年に法的枠組みが整備される前から、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会や、生活クラブ生協から生まれたワーカーズ・コレクティブなどのさまざまな団体が活動をしてきました。2年後の法施行に向けて、今後、労働環境を整えたり、新たな団体が生まれたりしていくことでしょう。
協同労働の最大の特徴は、出資口数にかかわらず誰もが均等な議決権をもち、組合員の意見を経営に反映する方法を定めなければならないため、働き手ひとりひとりの意見を尊重することです。
儲けるための営利のビジネスには共感できなくても、地域や生活の困り事を解決するために、仲間とともに経営するビジネスになら取り組みたいという人はいます。地方における共助のビジネスに要注目です。