はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
30歳、現在の年収は900万円程度です。年収に対して資産が少ないと感じており、節約と資産形成を進めています。今回、ご相談したいのは資産の大部分を占める払い済み保険についてです。これまでドル建てで積み立てしてきた養老保険の支払いを先日、払い済み保険に変更し、そのままにしている状況です。
今後の円安を見越し、円に替えるよりもこのままドルで保持するほうがよさそうですが、全体から見るとドルの割合が大きいように感じます。このまま解約せずにドルで運用しておくほうがよいのでしょうか? また今後、毎月積み立てる貯蓄はどのような資産に振り分ければよいでしょうか? アドバイスをよろしくお願いします。
現在の資産:600万円(現金50万円、国内株200万円、ドル建て保険350万円)
(30歳 独身 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。「外貨資産の比率が多すぎるのではないか」というご心配ですが、まずは現状認識からはじめる必要があります。
理想的な通貨の配分は?
これから長期で資産運用を行っていく場合、ご自身の為替に対する現状の見通しが反映されるべきだからです。
たとえば、5年後に今より円高になるのか、円安になるのかを考えてみます。
・円高になると思えば、円貨を外貨よりも多めに保有する
・円安になると思えば、外貨を円貨よりも多めに保有する
・わからないのであれば、円と外貨を半分ずつ保有する
上記が合理的な通貨の配分です。
ご質問者の方の資産構成は約60%が外貨で、40%が円資産となっています。
「将来は円安になる可能性が高い」と考えているのだとすれば、外貨資産を多めに保有する今の通貨配分は、現状の認識とフィットしている理想的な状況といえます。
ドル以外にも投資を
ただし、外貨資産が米ドルに偏っている点は修正していく必要があるといえます。米ドル以外にもユーロなどの主要通貨や、英ポンド、オーストラリアドルなどにも分散させておいた方がよいでしょう。
今後の資産を積み増す際には、ドル以外の通貨に投資することで比率を調整していってください。
また、今後、毎月の積立を行う場合も、通貨別の配分比率を定期的に計算し、ご自身の為替に対する見通しと一致するようなレベルになるようにモニタリングを続けていくことがよいでしょう。
なお、外貨運用商品は保険だけではありません。投資信託(インデックスファンド)のような金融資産や、海外不動産といった実物資産への投資も将来的には検討していきましょう。
資産形成は長期目線で
資産のなかで国内株が200万円となっている点が少し気になります。もし個別銘柄に集中投資しているのであれば、投資先を分散させる方法を考えるべきです。
また借り入れを活用し、不動産に投資する方法も研究してみましょう。節約をするよりもそちらの方が、資産形成には結果的にプラスになるかもしれません。
保険以外の資産運用については、私が以前に書いた『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』も参考にしてみてください。金融商品から不動産まで、これから始める人のためにわかりやすく解説しています。
まだ30歳ということで、資産形成にかける時間はたっぷりとあります。短期的な利益を狙うのではなく、長期的な資産形成といった観点を忘れないようにし、着実に資産を増やしていってください。