はじめに
業界情報を調べてみる
アパレル業界が厳しい印象はデータでも裏付けられました。次に「なかでも百貨店に店舗を持つ企業は厳しい」ということでした。これもデータを見てみましょう。経済産業省が発表している「商業動態統計」のデータを基に、先程の家計調査と同様、ここ20年の結果をグラフにしています。
たしかに、百貨店で販売されている衣料品は非常に厳しい状況が続いており、先程の家計調査と同じで2020年はコロナによるダメージが非常に大きくなっています。外出自粛だけでなく、百貨店自体が休業や時短営業をしたことも大幅マイナスの要因となっています。
さて、ここまで印象をデータで裏付けることをやってきました。やはり自分が興味を持っている業界というのは、特に難しい話を理解していなくても、自然と業界動向を把握できてるという仮説が正しいことが分かりましたね。しかし、ここまでの結果を見ると、アパレル業界には投資をしない方がいいように思えるかもしれません。そこで、もう少し細かい情報を見ていきましょう。
個別企業の情報を比較する
コロナでアパレル業界が厳しいと言っても、洋服が一切売れていない訳ではありません。百貨店での売り上げは下がっているかもしれませんが、一方で「伸びている販路もある」と知人は言います。
それはEC経由での売り上げです。総務省が発表している「家計調査」のデータを見てみると、コロナ前からECの利用世帯は上昇傾向にありましたが、コロナ禍においてさらに加速していることが下図から読み取れます。
アパレル業界に詳しい知人の抱いていた印象をデータに基づいて裏付けをとってきましたが、見てきた結論をもとに、たとえば大手アパレル企業であっても、百貨店への依存度が低く、ECへシフトできている企業という観点で銘柄を探すことはできないでしょうか。
上場企業の多くは決算説明会に用いた資料をホームページに掲載しており、決算短信や有価証券報告書などの財務諸表とあわせて調べていくと、大手アパレル企業は百貨店依存度やEC化率も知ることが出来ます。
昨年の3四半期における大手アパレル企業4社の売上高の推移をグラフ化したものが下図になります。TSI社がコロナ禍において最も減収率が低くなっていますが、この要因を探ってみると、やはり百貨店依存度が最も低く、EC化率は高いという特徴が見えてきます。
このように、自分が興味のある業界に属している上場企業をいくつか見つけ出し、自分が感じていることをデータによって裏付けていくと、自ずとどの企業に投資をすればいいのか、絞り込んでいけるかと思います。
投資の世界では昔から「あなた自身がよく知っているものだけに投資するのが、成功への道である」という言葉が言い伝えられていますが、まさに今回学んだことはこの格言にも基づいているのです。