はじめに

65歳以降の収支はどうなる?

65歳以降の年金収入についてですが、23歳までは払込免除で、その後は45歳まで厚生年金に加入してきたということなので、厚生年金の加入期間は22年間になります。退職後はパートで働く予定で60歳まで国民年金に加入するとします。

途中の給与がわからないため年金額の計算はできませんが、65歳からの受け取り年金額は10万円程度になるでしょうか。ここから介護保険料や健康保険料などを払うことになるので、手取りベースでは9万円弱になると思っておきましょう。

このように考えていくと、特に大きな支出が無かったと仮定した場合、65歳以降も年間100万円ずつ取り崩しをする現在の暮らしが続いていくと考えられます。65歳時点の残高が2,800万円なので、このまま100万円ずつ取り崩していくと93歳まで資産が続きます。

住宅の老朽化と健康リスク

考えられる大きなリスクは2つあります。

1つめは、住宅の老朽化です。ご実家に同居の予定とのことですが、ご実家はすでに築35年です。ご相談者さんが同居を始める5年後は築40年。水回りや外壁、内装など、気になるところを数年ごとにメンテナンスしていけばまだまだ住めるとは思いますが、ご相談者さんが一生住み続けると考えると、さらに50年間ほど住み続けることになるため、どこかで数百万円をかけた大規模な改修が必要となる可能性があります。

2つめは、健康です。お母さんは現在70代で独立してお元気で暮らしているとのことですが、何歳まで現在のような状態で暮らせるかはわかりません。パートをしながらお母さんをご相談者さんが支えれば、お母さんはそれほど心配ないかもしれません。ただし、その場合に心配になるのが、ご相談者さん自身の老後です。年間100万円ずつ預貯金を取り崩しながら、おひとりでつつましやかな老後を過ごす場合、介護サービスを外部に依頼するお金の余裕はあまり残っていません。介護サービスにお金を使うと老後資金が不足するジレンマが生じます。

退職後の仕事でも厚生年金への加入を目指して

5年後に退職した後のお仕事のイメージが今回「パート」になっていますが、ご相談者さんにとって「パート」を選ぶメリットはわずかです。現在、忙しく働いているので、短時間で働きたいというご希望は叶えられますが、パートは1時間当たりの時給は東北地方の場合800円程度からと、正社員に比べてかなり低くなっています。月に10万円稼ぐにも、時給800円の場合125時間働く必要がありますから、1日6時間働く場合には月に21日勤務となります。

また、会社員や公務員の妻がパートになる場合には、夫の社会保険の被扶養者になることで社会保険料負担を免除されますが、ご相談者さんがパートになっても国民年金や国民健康保険の支払いが必要です。令和3年度の国民年金保険料は月額1万6,610円ですし、ここに国民健康保険料の支払いが加わると、10万円稼いでも手取りは7万5,000円ほどになってしまいそうです(国民健康保険料の金額は自治体ごとに異なるため、概算でお話ししています)。

転職の際は自分の価値を下げないように

このように考えると、パートタイムで手取り9万円を稼ぐことが、実はかなり大変なことだとお判りいただけるでしょう。

退職するのであれば、しばらくゆっくりと休む時間を取ったうえで、復職時にはできれば正社員として働ける仕事を探すことをお勧めします。正社員としてならば、今ほど責任が重くなく、残業がほとんどない仕事を選んでも、パートより多くの給与が受け取れます。また、会社で厚生年金にも加入すれば、老後の年金受給額を増やすことができます。

現在の仕事に対して負担が重いと感じているようですが、それは会社がご相談者さんの実力を評価している証です。残業の無い仕事を探して転職をする場合にも、いたずらに自分の価値を下げないように気をつけましょう。

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