はじめに
日本のコロナ対策は若年層にツケを払わせている
日本で新型コロナウイルスによる10代以下の死者はゼロです。新型コロナウイルス死者の平均年齢が80歳を超えていることと合わせて考えると、彼らが強いられた行動変容は彼ら自身の健康よりも、「守ろう高齢者」のスローガン通り、公共のための犠牲の面が大きいと言えます。それにもかかわらず、政治家や首長、感染症専門家からは、十分なエビデンスが無いと認めながら、あたかも若年層が感染拡大の主因であるかのような情報発信が繰り返されています。
さらに、将来世代を考慮に入れると状況はより深刻です。厚生労働省の人口動態統計によると、2020年の国内の死亡数は前年からおよそ1万人減少し137万人となりました。死亡数は高齢化により年平均2万人程度増えているため、減少は11年ぶりとなっています。また、ウォールストリートジャーナルによると、2020年の日本の超過死亡(死亡者数のトレンドからの上振れ)のマイナス幅は世界最大となりました。新型コロナウイルス対策によって高齢者の命は例年を上回って守られたと言えます。
一方、出生数は前年比-2.9%、婚姻率は前年比-12.1%とともに大幅減少となりました。対面でのコミュニケーションの否定と移動制限は日本の少子化をさらに加速させています。
財政赤字の拡大も深刻です。IMF(国際通貨基金)によると、給付と貸し付けを合わせた日本の新型コロナウイルス対策の財政支出は対GDP比44%と、世界最大となっています。約1兆円あった東京都の財政調整基金の残高がほぼ尽きるなど、地方財政の悪化も深刻です。飲食店向け時短営業協力金などを一律に給付することは迅速な対応が必要な感染拡大初期には有効だったかもしれませんが、1年たっても同じことを繰り返しており、資金の使途として公正・適正だったかは大いに疑問です。
医療体制も先進各国と比較するといまだに脆弱なままです。1,400万人の人口を抱える東京都の重症者数のピークが1月20日の160人だったにもかかわらず、医療ひっ迫が連日叫ばれています。山中伸弥教授がファクターXと呼んだように、日本は厳格な罰則付き外出制限が行われた諸外国と比べて行動制限が緩やかなまま、新型コロナウイルスの感染者・死者は少ない状況を維持しています。それにもかかわらず、世界最大規模の財政赤字により次世代にツケを残し、出生数を減らし、若年層の自殺者を増やす結果に終わっているのです。