はじめに
価値観の変容で活性化してきた中古車市場
西村編集長によると、ここ数年の中古車市場は消費者の意識変化に後押しされ、拡大傾向にあったといいます。これまでの中古車は「安かろう悪かろう」という考え方や、日本では古い車へ課税が増えるなどの理由から、新車の購入が車市場のメインとなっていました。日本が世界に誇る数々の巨大自動車メーカーも、新車至上主義の市場構造に拍車をかけてきたことは否めません。
しかしここ数年、そうした流れに変化が起きています。CtoC市場の活性化、トレンドとなっているサステナブル消費、レトロブームなどによって、中古品そのものへの抵抗が薄くなってきました。「車はコスパよくスマートに買えれば中古でもOK」という価値観が定着してきたのです。
さらに新車は環境対応や安全整備などの技術革新が目覚ましく、価格も高騰しています。そのため最近は「残価設定ローン」などを利用し、月々の返済を抑えながら新車に乗り、数年後には売却や買い替えをするといった購入方法も増えてきているそうです。
こうした車市場をめぐる複合的な要因が重なったことで、今では中古車市場には新車と遜色のない新しくてキレイな中古車がどんどん流れているのです。
「50~100万円未満」の中古車購入が増えたワケ
では、2020年はどんな中古車購入にはどのような特徴があったのでしょうか。中古車購入までの検討期間を見てみると、平均日数は40.4日間です。これは前年と比べて10.9日間も短縮し、2015年の調査開始以来最も短い日数となっています。
また、中古車の支払総額を見てみると、最も多かったのが「50~100万円未満」(24.7%)で、前年より2.8ポイントも上昇しました。そのすぐ上の価格帯「100~150万円未満」(21.7%)は、前年より0.7ポイント下落しています。
この点について西村編集長は「コロナ禍でリアルな販売店への来店機会が減ったこと、さらには当座の移動手段確保のため購入を急いだ傾向があったためではないか」と分析します。
中古車販売店に来店すると、多くの人が当初予算からオーバーした車を買ってしまうといいます。予算が100万円でもセールストークやいろいろな車を実物として見ることで120万~150万円にまで実際の購入額が膨らんでしまうそうです。確かに、「最低でも5年くらいは乗る車だと考えると、20万円くらい予算がオーバーしてもいいものを買いたい」と思ってしまうのも頷けます。
2020年は、とりあえずコロナ禍が落ち着くまで乗れる車が欲しいものの、外出自粛の中ではいろいろなところに出かけて見る余裕はない。その結果、「数百万の新車を買うハードルは高いけれども、手が届きやすい金額の中古車を買いたい」として、予算の範囲内で中古車を購入したケースが多かったのでしょう。