はじめに

日常よく使われる「論理的」という言葉。そもそも、どんな意味なのか——。論理パズルや論理思考力に関する著作を多くもつ論理のエキスパート・小野田博一氏によれば、「実は、多くの人がその意味を正しく理解しないまま、なんとなく使っている」といいます。「自分の考えをうまく説明できない」「相手に伝わらない」とお悩みなら、まず「論理」とはなにかを考えることから始めてみましょう


※本稿は『「論理力の基本」トレーニングブック』(小野田博一・著)を再編集しています。

「論理的」でないとはどういうことか

日本人の発言や記述は、論理性が(少なくとも外見的に)損なわれていることがよくあります。それは主に、日本の独特な発言習慣や記述習慣からきています。

例を1つ挙げましょう。宅配便で荷物を送ろうとしている人Aと、コンビニの店員Bの対話です。

店員B「明日の配達になります。配達時間の指定はどういたしますか?」
荷主A「午前中は可能ですか?」
店員B「では、午前中にいたします」
これは、日本では非常によくあるパターンの対話ですね。 この対話が論理的には変だということが、あなたはわかりますか?

多くの人は、どこが変なのか、わからないでしょう(もしあなたがすでに気づいていたり、いま考えてみて、変であることがわかったのなら、あなたは十分論理的です)。

答えを明かせば、Bの発言が変なのです。Aは可能かどうかを聞いているのであって、「可能なら午前中にしてください」と言ったのではありません。 BはAの発言を「可能なら午前中にしてください」に勝手に置き換えて、それに対して返事をしています。

論理的な発言をしたいのなら、Bは「はい(可能です)」とだけ答えて、Aの意思決定(発言「では、そのようにしてください」など)を待つか、「はい(可能です)、そのようにいたしますか?」と述べるのが正しいのです。

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