はじめに
産休の男性版?「出生時育児休業」とは
また、改正育児・介護休業法では「出生時育児休業」が新設されます。これは現行の育児休業をパワーアップさせたようなもので、男性が子どもの出生直後に4週間まで休業することができる制度です。取得可能な期間は、女性の産後休暇と同じ「出生後8週間以内」で、男性の産休と言われたりもします。
現行の育児休業と大きく違うポイントは、「申請時期の短さ」「取得できる回数の多さ」「労使協定を締結すれば休業中も就業可能」の3つです。ひとつずつ解説していきます。
<出生時育児休業の概要>
資料:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内等をもとに執筆者作成
なお、出生時育児休業の取得中は、現行の育児休業と同じく、雇用保険から最大で休業前賃金の67%相当の「育児休業給付金」が支給されます。そのほかにも社会保険料免除や税金の負担減などがあるため、稼ぎ頭の男性でも収入面で過度に心配する必要はありません。(関連記事:男性の育休で収入は…育児休業給付金で「実質9割カバー」は可能?)
ポイント1:予定外の事態に対応しやすい2週間前申請
出生時育児休業は、原則2週間前までに取得申請すれば良いこととなっています(現行の育児休業制度は1カ月前まで)。
そのため、「出産予定日がずれたので育児休業の取得時期をずらす」「産後の母子の健康状態を見て取得日数を決定する」など、本当にサポートを必要とする時期・期間に合わせて柔軟に取得しやすくなります。
ポイント2:取得できる回数が増えて自由度アップ
出生時育児休業は、分割して2回取得できます。そのため、例えば妻が里帰り出産する場合には「産後すぐ」と「自宅に戻ったタイミング」の2回に分けて取得することなどができるようになります。
同時に、今回の改正により現行の育児休業でも2回に分割して取得ができるようになります。つまり、出生時育児休業と育児休業を合わせると、全部で4回に分けて休業できるようになるのです。
育児休業を複数回取得できるようになることで、育児休業を利用する上での自由度は大幅にあがるでしょう。「妻と交代で育児休業を取得する」「双子育児や上の子の夏休みなど、育児の負担が大きい時期をサポートする」など、妻の産後サポートとは別に、個々の家庭の事情に合わせて取り方をカスタマイズしやすくなります。
ポイント3:一定条件下では育児休業中の就業が可能
育児休業中は原則就業不可ですが、出生時育児休業中は、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主で事前に調整して合意した範囲内で就業することが可能となっています。
これにより、完全に休業するのではなく、1日のうち一定時間は仕事をしつつ家事や育児をする時間を確保して妻をサポートするという「半育休」の実現が可能になりそうです。
就業可能な日数や時間は、育児休業給付金の支給要件に合わせて「休業期間中の労働日・所定労働時間の半分」が上限となる予定です。働き方次第では育児休業と認められなくなる危険もあるので、出生時育児休業中の育児休業給付金や社会保険料免除の条件などをしっかり確認したうえで実行に移すことが不可欠です。