はじめに

世界のESG投資は増加基調

こうしたSDGsの目標達成に向けた取り組みを資金面から後押しする動きが続いています。世界のESG投資(環境[E]・社会[S]・ガバナンス[G]を重視して対象を選ぶ投資)額は増加基調にあり、2020年年初に5つの主要市場(欧・米・加・豪NZ・日)で35.3兆米ドルに拡大。その伸び率は過去2年間(2018~2020年)で15%増、過去4年間(2016~2020年)で55%増に達しました。

また、世界のESG投資が全運用資産に占める割合は、2016年の27.6%から2018年の33.4%、2020年の35.9%へと拡大しました。

欧米が主導、個人投資家の参入増

ESG投資の先導役は米国と欧州で、2020年に世界全体の80%以上を占めています。米国のESG投資額は2020年に17.1兆米ドルと2年前から42%増加。一方、欧州では2020年に投資残高が減少しましたが、EUの法律で持続可能な投資の定義が厳格化されたことが影響しています。いわゆる「名ばかり」ESG投資の排除が進んでいる可能性が高いでしょう。

世界的に機関投資家(年金基金、大学、保険会社など)主導でESG投資が拡大する中、個人投資家の関心も着実に高まっています。ESG投資全体に占めるその割合は2012年の11%から2018年に25%へと拡大し、2020年も同水準を維持しています。

日本のESG投資資産は2020年に2.9兆米ドルと過去4年間で6倍、過去2年間では34%増加。運用資産全体に占める割合は、2016年の3.4%から2020年の24.3%へと急拡大しました。

近年のESG投資増の背景には、SDGs債の発行増が一役買っているでしょう。債券と比較すると、株式関連のESG投資商品が少なかったことから、ESG投資全体に占める日本株・外国株のシェアが低下した模様です。

今後を見通すと、気候変動などSDGs課題の解決に向けた資金ニーズは一層高まる見通しです。日本でもESG投資ファンドは昨年辺りから増え出しています。海外の活発なESG投資市場を見れば、日本でもESG投資が拡大する余地は大きいでしょう。

<文:チーフESGストラテジスト 山田 雪乃>

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