はじめに

新型コロナウイルス感染症によって、世界各国で急激に失業者が増加しました。その後、ワクチン接種が進み、経済活動が再開されるにつれて失業率が改善しています。

アメリカやイギリスでは労働市場がひっ迫し、賃金上昇が発生している状況です。日本でも同じことが起こるかを確認するために、総務省統計局が発表している労働力調査を調べました。


コロナ禍による労働市場の傷は軽微


労働力調査の詳細を分析したところ、4つのことが見えてきました。
(1)リーマンショック時(2008年9月)と比べると労働市場への影響が抑えられていること。
(2)完全失業者数・完全失業者率が低く抑えられていること。
(3)正規の職員・従業員数は増加傾向。一方で、非正規の職員・従業員数は減少傾向とK字型経済が表れていること。
(4)就業者が既にコロナ前の水準近くまで回復していること。
※(リーマンショック時の影響:完全失業者率2008年4.0%→2009年5.1%と1.1ポイントの悪化。就業者数では2008年→2009年で95万人減少。)

この分析から、労働市場はコロナ禍でもあまり傷んでおらず、経済活動が再開されれば労働市場がひっ迫する可能性が高いと岩井コスモ証券では考えました。

人口は減少傾向、労働力の供給も先細りに

日本では、女性や60歳以上の就業率を上昇させ、労働力人口を増加させてきました。一方で、人口自体は毎年減少を続けていることから、労働力人口も同様に先細りが予想されます。今後供給面での改善は見込めないことから、労働需要によって労働市場が左右されることとなりそうです。

人材関連・DX関連企業には追い風

コロナ禍でも完全失業者率は高くなく、また供給面での改善は見込みないことから労働市場のひっ迫は継続することが予想されます。採用が難しくなり、労働者の売り手市場となる可能性が高そうです。

また、同一労働同一賃金が進められていることで、企業側の非正規雇用におけるメリットが弱まっていることから、非正規雇用者を正規雇用に転換することも考えられます。さらに、賃金の引上げによる労働力の確保や、機械化やDX化を進捗させての省人化、転職や副業市場の拡大などの動きが活発化していくことになるでしょう。

岩井コスモ証券では、バブル崩壊以降のミスマッチングや人手過剰感がデジタル化を遅らせ、賃金上昇を抑えていたと見ています。この人手不足が引き金を引く形で、生産性向上が求められるようになり、日本経済が活性化していく可能性があるのではないかと考えました。

幅広い業種が影響を受ける他、労働市場に関係する企業やDX関連する企業に恩恵があると見ています。