はじめに

感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、アジアにおけるコロナ禍の中心地となっていたインドネシアで、ようやく沈静化の兆しが見えてきました。10月に入り、新規感染者数は1,000人を下回る日もあるなど、7月のピーク時の5万4,000人超から大幅に減少しています。

ポストコロナを見据える上で、インドネシアの足元の状況と今後の課題について整理したいと思います。


厳しい活動制限から徐々に回復

インドネシアでは、政府が大型連休となる断食明け大祭(レバラン)の帰省ラッシュを警戒し、5月に帰省禁止などの措置を講じましたが、十分に人流を抑制することができず、6月に入って感染が急拡大しました。10月11日現在、同国の累計感染者数は423万人、死者数は14万人と、アジアではインドに次ぐ規模となっています。

感染者の急増により、7月3日、政府は人口の多いジャワ島と観光地のバリ島で緊急活動制限(PPKM Daurut)を発動しました。原則、一般企業の在宅勤務率を100%とし、オフィスへの出勤を禁じるなど厳しい措置でしたが、これにより、感染拡大はピークアウトしました。10月11日時点でPPKMは継続しているものの、最も低いレベル1まで引き下げられ、街には人が戻りつつあります。

世界経済の回復を追い風に、インドネシアの2021年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年同期比7.07%と5四半期ぶりのプラス成長となるなど、PPKMの発動前までは景気の底入れが進んでいました。しかし、PPKMの発動により7~9月期は一転、景気に急ブレーキが掛かった可能性があるでしょう。

2021年通年の成長率予測について、8月にインドネシア中央銀行が従来の前年比4.1~5.1%から同3.5~4.3%へと下方修正したほか、国際通貨基金(IMF)も4月の予測値の同4.3%から同3.9%に下方修正しました。直近、アジア開発銀行(ADB)も7月の予測値の同4.1%から同3.5%に引き下げています。いずれも、先行きに対して慎重な見通しを示していると言えます。

このまま新規感染者数の減少傾向が続けば、秋以降、景気の復調が期待されますが、英オックスフォード大学のデータによると、インドネシアでは必要回数のワクチン接種を完了した人の割合が20.8%にとどまるなど(10月10日時点)、接種の遅れが目立っています。また、相対的に見て効果が低いとされる中国製ワクチンが多用されていることも懸念されます。しばらく感染再拡大のリスクがくすぶる中での景気回復となりそうです。