はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
子供がいないこともあり、金銭的にだいぶ余裕があるので1年ほど前からインデックス型投信で積立を行なっております。現時点で2つの投信で積立を行なっており、ひとつが先進国株式に月5万円、もうひとつが新興国株式に月5万円を積立しています。ここ1年ほどの利率をみると、先進国のほうが9%程、新興国が2%程となっており、ついつい気持ちとしては先進国に10万円積立てたほうがいいのではと思ってしまいます。
そこで質問なのですが、このような場合には、利率が大きいほうの積立金額を増やすのではなく、逆に減らすことで両方のバランスを整えるべきなのでしょうか。また、株式以外に債券などの投信も積立対象に入れるべきなのでしょうか。
(20代後半 既婚 男性)
内藤: 積立を使って資産を形成していくのは、時間を分散するという観点からもよい投資方法だと思います。
ご質問者のように20代でこれから資産形成をする世代の方にとっては、毎月の収入の中から少しずつ資産をつくっていけるのもメリットといえます。
この時間の分散と並んで大切なのが、投資対象の分散です。
6つに分類して資産分散を考える
私は分散を考える方法として、資産を以下の6つに分類することを提案しています。
・日本株式:円貨の株式の値動きに連動する資産
・日本債券:円貨で定期的に金利収入が入ってくる資産
・外国株式:外貨の株式の値動きに連動する資産
・外国債券:外貨で定期的に金利収入が入ってくる資産
・流動性資産:現金、普通預金のような資産
・その他の資産:上記のどれにも当てはまらない資産
日本株式と外国株式は、株価に連動する資産になり、比較的リスクが大きくなります。それに対して、日本債券と外国債券は金利収入が決まっていて、満期になれば元本が戻ってくる資産といえます。株式が攻めだとすれば、債券は守りの資産といえるのです。
また、外国株式と外国債券には為替リスクがあります。
外国債券は現地通貨ではリスクが小さい資産といえますが、為替を考えると円ベースでは変動が大きい資産といえるのです。
流動性資産にはリスクはほとんどありません。その代わり、リターンも期待できない資産ということになります。
そのほかの資産には、REITや金などが入ってきます。これは株式や債券とは別に管理していくことになります。
資産の分散で重要なのは、値上がりしそうな資産に集中させることではなく、上記の6つの資産にバランスよく資産配分することです。
株式資産や外貨資産は、リスクが大きい資産といえます。
したがって、日本株式、外国株式、外国債券に資産全体の何%を配分するかが、資産運用のリスクを決めるのです。
資産を配分してリスクコントロールする
私が提唱している資産配分比率は、以下になります。
日本株式:10%
日本債券:30%
外国株式:30%
外国債券:10%
流動性資産とその他の資産合わせて:20%
債券を組み入れることによって、株価が急落したようなときに、資産全体のマイナスを抑えることができます。
資産運用を長期で続けるためには、マーケットが暴落するような局面で、資産の損失を一定の範囲に抑えて止めないことが重要です。
外国株式100%のポートフォリオは、攻めには強いと思いますが、リーマンショックのようなマーケットになると、資産が半減する可能性もあります。
上記の資産配分比率はひとつの例ですが、株式資産と外貨資産がそれぞれ資産全体の40%に収まっています。リスクコントロールは株と為替のふたつのリスクを持った資産を何%にするかで行っていくのが基本です。
ご質問者が積立をしている、先進国株式と新興国株式はどちらも外国株式に入ります。このふたつの比率を決める前に、まずは債券やそのほかの資産を含めた資産配分をリスク管理の観点からお考えになってはいかがでしょうか。
リスクコントロールを上手に行い、長期での資産形成を目指してください。