はじめに

今年10月以降、日本で新型コロナの新規感染者数が減少し続け、経済の回復期待が高まる中、東南アジアでも同様な展開が見られています。今回は新型コロナ禍が沈静化しつつある東南アジアの景気見通しについて見ていきたいと思います。


新型コロナの新規感染者数はピーク時の5分の1に

今年7~9月にかけて、東南アジアで新型コロナウィルスの変異株「デルタ株」が拡散したことを背景に、ASEAN主要5カ国の1日あたりの新規感染者数は8月に一時10万人超を記録し、これまで感染の封じ込めに成功していたタイとベトナムでも数多くの感染者を出しました。

深刻な感染状況に対処するため、ASEAN各国は厳格な移動制限やロックダウン、工業団地の一時封鎖に加え、ワクチン接種の拡大などを進めてきたため、11月初旬時点でASEAN各国の新規感染者数は約2万人とピーク時の5分の1に減少しています。

タイはワクチン接種済みの観光客の受け入れを再開

新型コロナの感染状況改善を受けて、ASEAN各国では移動制限を緩和する動きが広がっています。その中で、観光関連収入が名目GDPの約2割(2019年、WTTC調べ)を占めるタイでは、11月1日からワクチン接種済みの海外観光客に対して、検疫隔離免除で受け入れを再開しました。

検疫隔離免除の対象となるのは米国や欧州、中国、日本など60以上の国と地域から入国する観光客で、ワクチン接種済みの証明に加えてPCR検査を受ける必要がありますが、検査の結果が陰性なら翌日から自由に行動できるようになります。

タイは7月から既にリゾート地のプーケットでワクチン接種済みの観光客を試験的に受け入れており、今回の本格的な受け入れ再開をきっかけに、新型コロナ禍で年間4,000万人(2019年、タイ観光庁統計)から約9万人(2021年1~9月)に激減した観光客が今後徐々に回復することが期待されています。

ベトナムは10月からホーチミン市の外出制限措置を解除

ベトナムでは、今年4月下旬から5月にかけて北部の工業団地で新型コロナの集団感染が見つかり、その後南部のホーチミン市でも感染が広がったことで当局が厳格な外出制限措置を実施したため、国内の生産と消費活動が大打撃を受けました。

この影響によって、ベトナムの小売売上高や鉱工業生産、輸出総額といった主要経済指標は軒並み急減速し、7~9月の実質GDP成長率も4~6月の+6.6%から-6.2%へとマイナス成長に陥りました。

ただ、10月以降は新規感染数が減少に転じたことで、当局はホーチミン市の外出制限措置を解除し、10月28日から飲食店の店内飲食を5か月ぶりに再開するなど経済正常化に向けて動き出しています。

現在、飲食店の営業時間や受け入れ客数、市外への移動など一部制限は残っているものの、今後感染状況がさらに改善すれば10~12月のGDP成長率は再びプラス成長に転じる可能性があります。