はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
年間80~100万円程度は預金できる状況ですが、そろそろ資産運用も検討したいと考えています。既存の保険は取り崩さずに、預金と今後の収入の一部を運用に充てたいと思いますが、どのように、いくら運用をするのがよいでしょうか? 過去に投資信託で運用に失敗しており、あまり大きなリスクは取りたくないですが、多少のリスクはしょうがないと考えています。
【基本情報】
・家族:本人38歳、妻35歳、子供7歳
・職業:本人サラリーマン(東証一部上場)、妻パート
・年収:本人630万円(手取450万円)※社宅のため家賃は給与天引き、妻60万円
・資産:預金650万円(うち定期預金450万円)
※子供のための預金が別に180万円、終身保険(一時払い)1,700万円、一時払い終身(積立)年24万円
(30代後半 既婚・子供1人 男性)
野瀬: まずは、収入と支出面の確認から検討します。日本のサラリーマンの平均が40代半ばで400万円であることを考えると、現在手取450万円という水準は「まあ悪くはない水準」といえます。
さらに給与天引の家賃があることを考えると、実質の手取家賃はもう少し高いでしょう。そう考えても、収入・支出面はまずまずといえます。
年齢や解約条件をもとに保険を見直す
次に資産と借金面ですが、こちらはもう少し改善したいところです。解約の条件や保障金額など、保険の情報がいまいち詳しく見えないので推測でお話しするしかないですが、私の感覚でいえば、質問者の方の年齢で終身保険(一時払い)で1,700万円というのは少し金額が大きすぎる気がします。
なぜなら年24万円の積立があるので、保険機能としてはそちらで十分な気もするからです。
おそらく奥様がバリキャリタイプでもない、かつ、お子さんもまだ小さいからだと思いますが、このあたりを解約の条件などに照らし合わせたら改善の余地があるような気がします。
この保険が原因だとは思いますが、持ち家でなく、これだけ所得があるのに対して今の預金額というのは少し心許なく、もう少し貯金が欲しいところです。
保険は解約条件を見なければ判断は難しいですが、おそらくそれほど前に加入したものでもないので、全面的な見直しはかえって損になるでしょうし、そもそも質問者の方は保険を取り崩したくないとおっしゃっています。
また、今は会社の社宅に入っているかもしれませんが、これからも永遠にその恩恵にあずかれる保証はどこにもありません。
これらの状況を考えても、少し運用面を考えるタイミングなのかもしれませんね。
運用は余剰金の2/3が定期預金・1/3が投資
まずは、いくら投資に回すべきなのかを考えます。
私はいつも「もしなにかあっても(失業など)1年間は食いつなげるだけの預金は用意しておくべき」と主張しています。
質問者の方の場合は、年収が手取450万円・定期預金が450万円なので、この水準はクリアしているのですが、失業したら家賃も自己負担になる点、奥様の年収もあまり高くなく、お子さんもこれからお金がたくさん必要になる年齢である点を考慮すると、あと150万円積み増しして最低600万円程度の預金はほしいところです。
では、それだけの預金が貯まれば残りは運用に回してよいのかというと、そうでもありません。これはあくまで「最低水準」であり、今後の学費などの支出に備えて、運用だけでなく、預金も徐々に積み立てる必要があります。
お子さんが大学に進学するまでのあと10年間に、もうさらに600万円、合計1,200万円を積み増したいところです。
そうなると、150万円と600万円を足した750万円を、残り11年で積み増しができればよいかと思います。となると今預金できる最大金額100万円のうち、68万円は預金に、残りの32万円程度を運用に回すとよいでしょう。
おおむね余剰金の3分の2は定期預金、3分の1が投資というイメージでよいと思います。今後、昇給があっても、この比率でよいでしょう。
少ない資金でも継続的に投資する
次は、どこに投資するべきかなのですが、正直なところ、今はあまり積極的にガンガン運用するタイミングではありません。日本株も不動産も、ある程度上がりきっている状態だからです。
幸か不幸か、あまり投資に回せる金額も多くありませんので、月2万円~3万円程度を投資信託の積立投資に回すぐらいでよいと思います。
私自身も行き場が見当たらないお金は、とりあえず投資信託に置いておくようにしています。今はそれくらいの小さな金額に投資して、まずは、「投資」を継続的にするという感覚に慣れてください。
そして市況がまた変わったら、そのころに投資のポートフォリオを変えるとよいでしょう。
マイホームを中古で購入、預金の遅れを取り戻す
次は市況を見ながら、マイホームを買うという選択肢を頭に入れておいたほうがよいかもしれません。質問者の方の会社の社宅ルールを存じ上げないのですが、年齢によって制限を設けている会社も少なくないはずです。
いずれは家を借りるか買うかの選択が必要になるでしょう。今の所得は安定しているように見受けられますので、よい条件で住宅ローンが組めると思います。
今の市況から考えて、すぐに買う必要はありませんが、今から家を見る目を養っておいてください。注意していただきたいのは「新築を買わない」ようにすることです。
先ほども言いましたが、質問者の方の場合、年齢から考えて預金はあまり多いほうではありません。この遅れを取り戻すもっともよい方法が、マイホームを買うときに中古物件を買う、という方法です。
日本には新築信仰というものがあり、ほとんどの方が新築を好むのですが、日本のリフォーム技術を舐めてはいけません。
築20年の一見ボロ部屋でも、200万円~300万円程度リフォームにかければ、新築と見間違えるほどキレイな家になります。
この“リフォームすればメチャクチャ綺麗”という感覚も、日頃から中古物件の見学をしていると養われますので、まったく買うつもりはなくてよいので、ご近所でオープンハウスなどがあればフラッと見に行くとよいでしょう。
ポイントは奥様と一緒に行くこと。奥様にも「中古で十分」という意識の刷り込みが成功すれば、将来実際の物件を買うときもスムーズに進むと思います。