はじめに
RCEPの意義と存在感増す台湾
いよいよ2022年1月に、RCEP(地域別の経済的包括連携)協定が発効します。これは、日本、中国、ASEANなど15の国が参加する経済連携協定で、予定通り15カ国すべてが発効すれば、世界のGDPのうちおよそ3割を占める巨大貿易圏が生まれることとなります。
ここ数年の米中貿易戦争や新型コロナウイルス問題の世界的拡がりによって、世界的には交易の分断が目立ちますが、そのような状況の中では異色の動きといえます。発効国のなかでは、競合する産業が多く、かつ、人件費などの面でコスト競争力のあるベトナムが恩恵を受けやすいと思われます。
おりしも、2021年12月には、パナソニックが中国の家電大手TCL社への生産委託での合意を発表しました。対象は低価格機種のテレビですが、直近の日本の電機産業縮小、中国企業の隆盛を如実に示しているケースといえます。このたびのRCEPには、勢いのある中国、アグレッシブな韓国が含まれており、今後、同様の投資が増えてきそうです。
また、このRCEPの参加国のなかに含まれてはいませんが、注目されるのが台湾の動きです。台湾のみならず世界を代表する半導体ファウンドリーメーカーである台湾積体電路製造TSMCは、2020年5月に米国・アリゾナ州、2021年10月に日本の熊本に工場を建設すると発表しました。さらに欧州からも誘致を打診されているもようで、世界半導体関連メーカーからの注目度の高さがうかがえます。
日本はTSMCの工場を誘致できたとはいえ、楽観視はできません。TSMCによる米国と日本の2つの投資案件は、種類、意味が大きく異なります。米国の作る製品が、5㎚と微細化の進んでいる最先端クラスの製品である一方で、日本の方は22~28㎚の汎用半導体製品です。
米国にとっては、最先端級の技術を手に入れて自国の半導体産業を強化する、という点でメリットが大きい一方で、日本に誘致するのは多くの電子機器に使われる汎用品であるため、日本を含む多国、企業にとってメリットのある話です。結局、日本の熊本工場はTSMCの利益拡大のために建設されるもので、日本にとってメリットの大きい投資案件とはいいにくいでしょう。
意義や期待される効果は異なりますが、半導体や電子部品関連の世界的な旺盛な需要が続いているなかで、もともと電子産業に強みを持っている台湾の今後の動向も要注意だといえます。
<文:市場情報部 明松真一郎>