はじめに

「保育園に入れなかったけど仕事に復帰したい」「しばらくは子育て中心の生活だけど、ペースは落としても仕事は続けたい」

仕事と育児の両立に葛藤するワーキングマザーに寄り添い、サポートしてくれるシェアオフィスがあります。


ママの願いを叶えるオフィス

「子供の成長を近くで見守りながら働きたい」「少しでも負担を軽くするために家の近くで働きたい」、そんな働く母親の願いを叶えてくれる場所があります。

世田谷区用賀駅から徒歩15分のところにある『マフィス馬事公苑』は、保育サービスが付いたシェアオフィスです。

かつて絵本美術館だった室内は、壁一面がガラス張りで、目の前に馬事公苑の緑が広がります。中2階にあるワーキングスペースからは、保育スペース全体を見渡すことができ、仕事をしながら子供たちの生活を覗けます。

5月には、馬事公苑に続き、2番目となる『マフィス横濱元町』が横浜市中区にオープン。内閣府が仕事と子育ての両立支援を目的にした“企業主導型保育事業”の認定施設に指定されています。

3つの要素が偶然に重なり、開設へ

オクシイPRマネージャーの宮崎さん

マフィス開設のきっかけについて、運営するオクシイ・PRの宮崎さんに聞きました。

「当社代表取締役の高田は、二人の子育てをしながら不動産会社で管理職として働くなかで、“ワーキングマザーの働き方をもっと簡単にしたい”とずっと考えていました。

第2子出産後に職場復帰すると、東日本大震災が発生し、その思いはより強くなったそうです。

そして、働き方をもっと簡単にするためには、“家と保育園と職場、このトライアングルをなるべく小さくすることがなによりも大切”だと考えていました。けれど、当時は働き方改革が今ほど声高に叫ばれていなかったため、ずっとそのコンセプトを温め続けていたのです。

その後、長男の“小1の壁”にぶつかったことで『子供の健やかな成長を守りながら働きたい』と強く感じるようになり、ちょうどその頃に、まとまった自己資金が用意できたことと、馬事公苑の目の前という最高のロケーションが見つかったことが偶然にも重なり、2014年12月にマフィス馬事公苑をオープンさせました」

利用理由は“子供の側で仕事をしたい”

開設からもうすぐ3年目を迎えるマフィス馬事公苑は、全国で最も待機児童が多い世田谷区にあります。しかし、子供を保育園に預けられなかったから利用しているという人ばかりではないと宮崎さんは話します。

「マフィス馬事公苑のご利用者様はフリーランスで働く方をはじめ、リモートワークを推奨する企業・団体で働く方が多くいらっしゃいます。フリーランスの利用者様が多いというのもありますが、幼稚園に入るまでは子育てに注力しながら仕事をしたいという人も多いです」

一定期間は子供に向き合いたい、子供の成長を自分の目で見守りたい、仕事復帰後も母乳育児をあきらめたくない……そんな思いを抱えた母親たちが“子供の側で仕事をしたい”とマフィスを選んでいるそう。

子供が生まれたことで見直す働き方。「出産はキャリアチェンジのタイミングでもあります」と宮崎さん。育児休業中に資格取得のための勉強場所としてマフィスを利用する人も多いそうです。

※月ぎめ契約の固定デスク・フリーデスクのほか、1時間から利用できるビジターも用意。

時間短縮で仕事に集中、体も楽に

昨年8月から利用している野田さんは、マフィスで仕事をしながら勉強をし、一級建築士の資格を取得しました。利用している理由について教えてもらいました。

長女の育休から仕事復帰をしようとしたとき、「当時、夫は仕事で帰りが遅く、フルタイムで復帰しても自分が大変になることは目に見えていた」と野田さん。そのため、復帰後は働き方をセーブして短時間勤務を選択しました。すると、認可保育園に入るための点数が低くなり、入園が難しくなってしまったといいます。

現在、長女は幼稚園に通い、その間、野田さんは次女と一緒にマフィスに来て、子供を預けて仕事をします。もとは次女の預け先として見つけたのがはじまりでしたが、シェアオフィスが併設されているなら、自分もここで仕事をしたいと思い、会社に希望を出したそうです。

「託児所が付いているので通勤と送り迎えの時間が一緒になり、そのうえ家から自転車で移動できる距離になったことで、今までかかっていた時間がだいぶ短縮されるようになりました。その分、仕事にも集中できるようになり、通勤していた頃と同じ時間に終業しても、家に早く帰れるので疲れることがなくなり、体もだいぶ楽になった気がします」

“母親が働いている”を子供なりに認識するように

野田さんは、今後もマフィスを利用し続けていきたいと話します。

「子供が小さいうちは、帰宅時間が早いこともあり、家にいたいと思う日もあります。だからといって、まだ幼い次女と1日中家にいながら、ダイニングテーブルで仕事をして、ご飯もつくって、長女の勉強を見て……となると、どうしても集中力が続かないので、上手に活用していきたいと思っています」

自宅で子供を見ながら仕事をする難しさについて、宮崎さんも次のように話します。

「母親が自宅で仕事をするとなると、睡眠時間を削るか、子供にTVやDVDなどを見せて静かにしてもらうかのどちらかしかありません。仕事をしているときに子供に話しかけられたりすると、仕事は中断してしまいますし、つい、『ちょっと静かにして!』と言ってしまい、自分の言葉に罪悪感を持つ方がとても多いです」

ここに来て、子供と離れて過ごすことで、母親は仕事に集中できるようになり、そうした罪悪感からも解放されるといいます。一方で、同じ場所に子供がいるので、母親は好きなときに席を立ち、子供の様子を覗いたり、声をかけたり、寝顔を見ることができます。

同じように子供も、保育時間に母親と離れて、同年齢の子と関わることで刺激を受け、できることが増えてきたという声が届いているそうです。そして、仕事をする母親の姿を近くで見ることで「“母親が働いている”ことを子供なりに認識しているのでは」と宮崎さん。

”子供と離れて過ごすこと”と“子供と同じ場所にいること”、その両方の良さを感じられる働き方ができます。

今後の展開について宮崎さんは次のように話します。

「優秀な女性たちが働きたいときに働ける社会を作るために、働き方もフルタイムか時短だけではなく、リモートワークをはじめ、多様な働き方を推進していく施設でありたいと思っています」

“子供の側で仕事をしたい”という母親の願いを受け入れてくれる場所が、今後も増えていくことに期待が高まります。

※マフィスの利用料金など詳しい情報はこちら

(文:編集部 土屋舞)

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