はじめに
6月16日、世界で6番目のディズニーリゾート「上海ディズニーランド」が開業しました。日本円にして約5700億円を投じて建設されたもので、アメリカのアナハイム(ロサンゼルス近郊)、オーランド、東京、フランスのパリ、そして香港に次ぐ、世界で6か所目のリゾートです。
この上海ディズニーランドの開業はどのような影響を及ぼすことになるのでしょう?
中国の偽ディズニー商品はどうなるのか?
中国というとまず思い浮かぶのが偽ディズニー商品。ディズニーそっくりのキャラクターが登場するテーマパークがニュースで話題になることが多いうえに、中国本土では偽ディズニーのキャラクターグッズが多数流通していることはよく知られていいます。上海ディズニーランドの開業時には、偽入場券も騒ぎになったと聞きますが、そういった偽商品が今後どうなるのかが気になる人も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、この開業が契機になって、中国全土でブランドのライセンスについての啓蒙が進み、中国での偽商品ビジネスは徐々に縮小することになると思われます。
日本でも東京ディズニー開園でライセンス啓蒙は進んでいった
今でこそ日本は中国の偽ライセンス商品について、まるで遅れた国のように笑いながらマスメディアも報道することが多いのですが、1983年に浦安に東京ディズニーランドが開園した当時には、浦安駅近辺でディズニーの偽ライセンス商品を売るお店が多数軒を並べていたものです。私の記憶にあるのは、シンデレラ城風のお城とミッキー風のキャラクターが描かれた「ミツキー饅頭」という商品。ミッキーではなくミツキーだから別の商品だと業者は言いたかったのでしょう。30年前の日本は、まだこんな感じの社会だったのです。
その後、学校で生徒たちが描いたプールの底のキャラクターの絵がディズニーの抗議で消されることになるといった社会的な事件が起きる中で、徐々に日本人はキャラクターや著作権というものについての啓蒙が行われ、現在のようなライセンスを守る社会へと変わって行ったのです。
これと同じ現象が、これから10年ほどかけて中国でも徐々に起きていくことになると思います。中国では昔はHONDAのバイクやコベルコの重機のクローンが出回っていましたが、日本から本格的に投資が行われていく中で、そのような偽物が消えていったのと同じで、投資が行われれば、市場は変わるのです。
大きな影響を受ける周辺諸国の観光地
もう一つ大きな影響を受けるのが、日本を含む、アジア周辺のテーマパーク市場でしょう。あまり指摘をする人は多くはありませんが、1983年に東京ディズニーランドができたことで一番大きなマイナスの影響を受けたのはロサンゼルス観光市場でしょう。それまでは定番のアメリカ旅行商品といえば西海岸のロサンゼルスに出かけてディズニーランドと市内を観光して帰るというものだったのですが、これが東京ディズニーランドの開業で少なからず影響を受けます。
というのも、東京ディズニーランドのアトラクションはアナハイムのディズニーランドとほぼ同じ。なので日本人にとってアナハイムはわざわざ海外旅行の途中で寄るべき場所ではなくなったのです。
結果、西海岸の旅行スポットは、サンフランシスコやラスベガス、そして大自然が満喫できるシアトルやカナダのバンクーバーの方が主流になってしまいました。今では東京―ロサンゼルス路線はアメリカで一番安く航空券が買える路線になってしまいましたが、逆に言えば、それだけ観光客の数が減ってきたことを意味しているのです。