はじめに

一度失われた自由を取り戻すのは難しい

また、表現の自由もそうですし精神的自由に関してよく言われるのは、不可逆性についての指摘です。一度損なわれてしまった表現の自由や精神的自由は、取り戻すことはできないかもしれないという懸念です。

たとえば、「知る権利」や「表現の自由」に制約を課すと、政治的選択などについて制約が生じて、ある政党や個人の独裁になってしまう懸念があるので、表現の自由や精神的自由は、他の自由に比して尊重するべきだと考えられています。「二重の基準」などと言われています。独裁から自由民主主義に変わるのは、どの国を見てもとても難しいですし、革命に際して多くのコストを払うことが多いです。なので、もちろん権利が衝突するような場合には対策を考えなければならないのですが、これらの制約はとにかく慎重にやりましょう、最小限にしましょうと考えられてきました。

人々はある意味無邪気に、自ら「自由を捨てたい」と言い出したり、すでにある権利を制限するべきだと言い出したりします。それらの言動は、実はいつの時代もあることです。その声に後押しされる政治的勢力もあります。歴史的に見ればファシズムや全体主義と結びつきがちで、そうした声については、背後の価値観に目を向けながら慎重に扱うべきだということになります。いまも危機に乗じて、コロナ対策のためということで、私権制限を望む声があります。もちろん場合によっては必要ですが、慎重に考える必要があります。


西田亮介(にしだりょうすけ)
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。専門は社会学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。著書に『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(朝日新聞出版)、『不寛容の本質 なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか』(経済界)、『メディアと自民党』(角川新書、2016年度社会情報学会優秀文献賞)など。

ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください

著者 西田亮介

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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