はじめに

先週多くの企業が決算発表を終了しました。その中で、特に注目を集めた企業がありました。2024年3月末で株主優待を廃止する事を発表したオリックス(8591)です。

この報道を私もツイートしましたが、反響が大きくインプレッション(他の閲覧者に表示された回数)が78万となりました。

株式市場に携わる方は株主優待制度をご存知だと思いますが、携わっていない方の為に、株主優待制度について簡単に説明します。


優待効果で株主が大幅増

株主優待制度とは、一定の株数以上を保有している株主に対して、企業が年に1~2回、配当金以外のモノやサービスを贈呈する制度のことです。売却益や配当金を目的としたものの他に、この株主優待に注目した運用方法もあります。暮らしに役立つさまざまな優待を受けながら、堅実な投資を行いたいという人から注目されています。

近年、マスメディアにも取り上げられる機会が増え、株主優待の取得を目的として企業を選択している投資家も多いように感じます。

オリックスも、2010年から「株主カード」の提示により同社が展開するサービスの割引優待制度を開始し、2015 年よりカタログギフト方式 の「ふるさと優待」を実施し、株主から人気のある企業でした。

同社の株主総数を見ると、2014年には約4.5万人、2018年3月末には約30万人、2022年3月末には約82万人へと大幅に増加しています。同社の株主優待への人気がその数から見てわかります。

しかし、今年に入り株主優待制度を廃止する企業が増加しています。

株主優待廃止の背景

いくつかの理由を説明します。今年4月から東京証券取引所は市場再編を行い、株主数の規定を緩和しました。東証1部では2,200人必要だった株主数を800人に緩和した事で、個人株主を確保する一つの策としての優待制度の必要性が薄れた事が挙げられます。

また、コーポレートガバナンス・コードが浸透する中で、株主還元の手段として配当金や自社株買い(市場に出回る株を自社が買うことで1株あたりの価値を高める)を重視する傾向にあります。

株主優待は、企業側にとって、かなり手間がかかることは容易に想像ができます。株主優待の手順は、まず株主専用のカタログを印刷、またはWebページを作成し、その旨の案内を株主に郵送。株主は商品を選び、希望の商品を企業側が送料を負担して株主に送ります。オリックスの場合は82万人分ですから、手間とコストを考えると大変な状況です。

また外国人投資家、機関投資家には株主優待の恩恵はありません。株主の平等性の観点からも今後も、配当金で一律に還元する事を選択する企業や、株主優待を廃止または縮小させる傾向が強いのではないかと思います。

現に、オリックスだけではなくJT(2914)やマルハニチロ(1333)なども株主優待を廃止し、株主還元(配当等)に集約するとしています。

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