はじめに
止まるところを知らないインフレの高まり、それを受けた世界的な金融引き締め、そして景気悪化懸念と株式市場にとってはまさに逆風が吹いています。しかし、その中で意外に日本株は健闘しています。
下落相場で抵抗力を見せる日本株
年初来の下落率を見ると、S&P500は弱気相場入りとされる20%を超えているのに対して、TOPIXはまだ6%程度にとどまっています(6月24日時点)。かつては米国株に比べ弱さが目立っていた日本株ですが、最近は反対に日本株の下げ渋りが顕著です。
日本株が米国株より下押し抵抗力があるのは、いくつか理由が考えられます。第一の理由はバリュエーション(企業価値評価)の違いです。そもそも年初から続いている米国株下落の最も本質的な理由は金利上昇に対するバリュエーション調整です。コロナ・パンデミックの経済対策としてFRBが未曽有の金融緩和を行い、米国の長期金利は異常な水準にまで低下しました。それを受けたS&P500のPERは20倍以上にまで拡大しました。いわばコロナバブルの状況が発生したのです。
それが、いまやFRBは急激な引き締めに転じ、長期金利は急上昇しました。さすがに20倍を超えるような高いPER(株価収益率)はもはや正当化できず、米株のPERは下がるべくして下がっているわけです。
ところが日本はそもそも金利がほとんど動きません。金利低下でPERが上昇するということもなかったので、金利が上がってPERが低下するという、米国のようなバリュエーション調整の必要がありません。これが日本株の底値が堅い第一の理由です。